「ルナ・ロッサ Luna Rossa」は、ヴィンツェンツォ・デ・クレッセンツォ(Vincenzo De Crescenzo, 1915-1987)作詞、アントニオ・ヴィアン(Antonio Vian, 1918-1966)作曲により、1950年に発表されました。
もともとはナポリ語のカンツォーネですが、さまざまな言語で歌われ、シャンソンでも人気の曲です。
「ルナ・ロッサ」歴史と解説
「ルナ・ロッサ」は、ビギン(beguine:ルンバに似た西インド諸島由来のダンスリズム)と呼ばれる形式の曲で、1950年、ナポリのアウグステオ劇場で開催されたピエディグロッタ祭で初めて披露され、ジョルジョ・コンソリーニがネッロ・セグリーニのオーケストラの伴奏で歌いました。
この楽曲はすぐに人気となり、戦後の大ヒット曲のひとつとなりました。
ナポリからイタリア全土へ、そして海外でも成功を収め、42の言語と方言に翻訳されるまでになりました。クラウディオ・ヴィラはこの楽曲を自身の代表曲としました。
1952年には「月への祈り Prière à la lune」というタイトルでフェルナン・ボニファイ(Fernand Bonifay)がフランス語の歌詞を書き、リュシエンヌ・ドリール(Lucienne Delyle)が歌い、人気を集めました。その後アメリカに渡ると、フランク・シナトラが「Blushing Moon」という曲名で歌うなど、数多くの歌手によって歌われる曲となりました。
「ルナ・ロッサ」とは「赤い月」という意味のタイトルで、愛する人を想う男性の悲しみを歌った曲です。
夜中の3時、ひとり街をさまよう男性。愛する人がバルコニーから顔を出してくれることを期待しますが、彼女は現れません。彼女に会えるかもしれないという虚しい希望の中で、男性は空に浮かぶ赤い月に語りかけ、愛する人に会えるかどうか尋ねます。すると月は「ca nun ce sta nisciuno!(ここには誰もいない)」と答えます。

<カンツォーネの名曲が収録された楽譜集>
「ルナ・ロッサ」原曲歌詞と日本語訳

【1番】
Vaco distrattamente abbandunato,
ll’uocchie sott’ ‘o cappiello annascunnute,
mane ‘int’ ‘a sacca e bávero aizato
Vaco siscanno ê stelle ca só’ asciute
虚ろな心でひとり歩く
目は帽子の下に隠し
襟を立て、手はポケットに
星に向かって口笛を吹く
E ‘a luna rossa mme parla ‘e te,
io lle domando si aspiette a me,
e mme risponne: “Si ‘o vvuó’ sapé,
ccá nun ce sta nisciuna”
赤い月が君のことを話す
「君は僕のことを待っているか」月に尋ねる
「知りたいか」月は答えた
「ここには、誰もいない」
E i’ chiammo ‘o nomme pe’ te vedé,
ma, tutt’ ‘a gente ca parla ‘e te,
risponne: “E’ tarde che vuó’ sapé?
Ccá nun ce sta nisciuna”
君の名前を月に伝える
みんなが君のことを話している
「今さら何を知りたいのか」月は答えた
「ここには、誰もいない」
Luna rossa,
chi mme sarrá sincera?
Luna rossa,
se n’è ghiuta ll’ata sera
senza mme vedé.
赤い月よ
誰が正直に話してくれる?
赤い月よ
彼女に会えない夜がまた過ぎる
E i’ chiammo ‘o nomme pe’ te vedé,
ma, tutt’ ‘a gente ca parla ‘e te,
risponne: “E’ tarde che vuó’ sapé?
Ccá nun ce sta nisciuna”
君の名前を月に伝える
みんなが君のことを話している
「今さら何を知りたいのか」月は答えた
「ここには、誰もいない」
Luna rossa,
chi mme sarrá sincera?
Luna rossa,
se n’è ghiuta ll’ata sera
senza mme vedé.
赤い月よ
誰が正直に話してくれる?
赤い月よ
彼女に会えない夜がまた過ぎる
同じく、愛する女性を想う男性の切ない恋心を歌ったカンツォーネをご紹介します。