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サンライズ・サンセット『屋根の上のバイオリン弾き』より歌詞の意味・解説

画像出典:https://jewishjournal.com/culture/arts/296785/sunrise-sunset-fiddler-on-the-roof-revivals-in-los-angeles-and-new-york/

サンライズ・サンセット Sunrise, Sunset」は、ジェリー・ボック(Jerry Bock, 1928-2010)作曲、シェルドン・ハーニック(Sheldon Harnick, 1924-2023)作詞により、1964年に発表されました。

ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き(Fiddler on the Roof)』の劇中歌として、世界中で愛され続けるブロードウェイ・ミュージカルを代表する名曲です。

「サンライズ・サンセット」歴史と解説

ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』あらすじ

「サンライズ・サンセット」は、家族の成長と時代の流れを象徴的に描いた、ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』を代表する楽曲です。
この楽曲が登場する背景には、ユダヤ人一家が伝統と現実の狭間で生きる姿を描いた、重厚な物語があります。

『屋根の上のバイオリン弾き』は、ウクライナ出身の作家ショーレム・アレイヘムの『牛乳屋テヴィエ』を原作とし、1964年にニューヨークのインペリアル劇場で初演されました。
舞台は1905年、帝政ロシア時代のウクライナにある村「アナテフカ」。主人公は、ユダヤ人で酪農を営むテヴィエと妻のゴールデ、そして5人の娘たちです。

貧しいながらも家族を大切に暮らしていたテヴィエは、成長した娘たちの結婚問題や、ユダヤ教の戒律と個人の幸せとの間で葛藤します。さらに時代が進むにつれ、ユダヤ人迫害(ポグロム)は激しさを増し、一家は厳しい現実に直面していきます。
それでも家族の愛と誇りを胸に生き抜く姿が、多くの観客に勇気と感動を与えてきました。

過酷で困難な状況でも家族の愛と絆を守り、強さと誇りを忘れずに生きていく一家の姿に勇気と感動をおぼえる作品です。

日本での上演

画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=g87mYin7eDM&t=7s

『屋根の上のバイオリン弾き』は、日本では1967年9月、帝国劇場で初演され、テヴィエ役を森繁久彌、妻であるゴールデ役を越路吹雪が務めました。

特に森繁久彌は、1986年までに通算900回もテヴィエを演じたことで知られています。その後も、西田敏行(1994年〜)市村正親(2004年〜)と名だたる俳優が役を引き継いできました。

「サンライズ・サンセット」が歌われるシーン

「サンライズ・サンセット」は、テヴィエの長女ツァイテルと、貧しい仕立屋モーテルの結婚式のシーンで歌われます。

テヴィエは当初、娘を裕福な肉屋ラザールに嫁がせようとしていましたが、ツァイテルには幼馴染のモーテルという恋人がいました。しかし、二人の純粋な愛に心を動かされ、最終的に結婚を許します。

結婚式当日、テヴィエと妻ゴールデは娘の花嫁姿を見ながら、つい昨日まで小さな子供だったはずの娘がいつの間にか大人になっていたことに驚き、時の流れの速さを感傷的に歌います。一方で、次女ホーデルと彼女に想いを寄せる学生パーチックは、自分たちの将来の結婚を思い描きながら、歌に加わります。

「サンライズ・サンセット」の意味

Sunrise, Sunset(日の出、日没)」というタイトルは、毎日変わらず繰り返される自然の営みを通して、誰にも止めることのできない時間の流れを象徴しています。
朝日が昇り、やがて夕日が沈む。その当たり前の循環の中に、人の人生もまた静かに重ねられているのです。

歌詞に描かれるのは、「抱っこして歩いた小さな女の子」や「遊んでいた小さな男の子」が、いつの間にか成長し、結婚式を迎える姿です。
つい昨日まで幼い存在だったはずの我が子が、大人として人生の節目に立っている。その変化に気づいたときの、親の深い喜びと、時の流れへの驚きが、穏やかな言葉で綴られています。

コーラスでは、「日は昇り、日は沈む/あっという間に日々は過ぎていく/種は一夜にしてひまわりに育ち/見つめている間に花開く」と歌われ、子どもの成長がひまわりに例えられます。そこには、成長の早さへの戸惑いと同時に、凛とした美しさを慈しむまなざしが感じられる部分です。
さらに「喜びと涙を積んで/季節は次々と巡りゆく」という一節は、人生が喜びだけでなく悲しみも含めて成り立っていること、そしてそのすべてを抱えながら人は歩んでいくのだという真理を静かに語りかけます。

また、パーチックとホーデルが歌うパートに登場する「canopy(天蓋)」は、ユダヤ教の結婚式で新郎新婦が立つ「フッパー(chuppah)」を指すフレーズです。
「私にも天蓋が待っているだろうか?」という問いには、「自分たちにも結婚という未来は訪れるのだろうか」という若者ならではの希望と不安が込められています。

「サンライズ・サンセット」原曲歌詞と日本語訳

1番(テヴィエとゴールデ)
Is this the little girl I carried?
Is this the little boy at play?
I don’t remember growing older
When did they?

これが私が抱いて歩いた あの小さな娘なのか?
これが遊んでいた あの小さな男の子なのか?
年をとった覚えはないのに
あの子たちはいつの間に大人になったのだろう?

When did she get to be a beauty?
When did he grow to be so tall?
Wasn’t it yesterday
When they were small?

いつの間にあの娘は こんなに美しくなったのだろう?
いつの間にあの子は こんなに背が高くなったのだろう?
あの子たちが小さかったのは
つい昨日のことではなかったか?

【コーラス】
Sunrise, sunset
Sunrise, sunset
Swiftly flow the days
Seedlings turn overnight to sunflowers
Blossoming even as we gaze

日は昇り、日は沈む
日は昇り、日は沈む
日々はあっという間に流れていく
種は一夜にしてひまわりに育ち
見つめている間に花開く

Sunrise, sunset
Sunrise, sunset
Swiftly fly the years
One season following another
Laden with happiness and tears

日は昇り、日は沈む
日は昇り、日は沈む
年月はあっという間に過ぎ去っていく
季節は次々と巡りゆく
喜びと涙を積んで

【2番(パーチックとホーデル)】
What words of wisdom can I give them?
How can I help to ease their way?
Now they must learn from one another
Day by day

どんな知恵の言葉を 贈れるだろうか?
どうすれば彼らの道を 楽にしてあげられるだろうか?
これからは二人で 互いに学んでいかなければならない
日々の暮らしの中で

They look so natural together
Just like two newlyweds should be
Is there a canopy in store for me?

二人はとても 自然に寄り添っている
新婚の二人は こうあるべきだ
私にも天蓋(結婚)が待っているだろうか?