オペラ

誰も寝てはならぬ 歌詞の意味・解説

誰も寝てはならぬ Nessun dorma」は、ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini,1858-1924)作曲のオペラ『トゥーランドット(Turandot)』第3幕で王子カラフの歌うアリアです。

テノール歌手にとっては憧れの曲で、世界3大テノールとして知られるルチアーノ・パヴァロッティ(Luciano Pavarotti,1935-2007)が歌ったことで有名になりました。

2006年のトリノ五輪で、荒川静香選手がイナバウアーをするときに流れていた曲が「誰も寝てはならぬ」です。荒川選手は見事に金メダルを受賞し、ニュースで何度もこの曲が流れたので記憶に残っている人は多いでしょう。

Image by Archivio Storico Ricordi, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=94101132

プッチーニ『トゥーランドット』の概要とあらすじ

トゥーランドット』は、1926年4月25日にミラノのスカラ座で初演されました。指揮は20世紀最大の指揮者と言われるアルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini,1867-1957)です。

実はプッチーニが書いたのは『トゥーランドット』の第3幕「リューの自殺」のシーンまでで、作品は未完のまま、プッチーニが亡くなってしまいます。残りの部分はフランコ・アルファーノ(Franco Alfano,1875-1954)が補筆しました。

物語の舞台は、伝説の時代の中国・北京。

絶世の美女といわれる皇帝の娘トゥーランドット姫の結婚について「3つの謎を解いた男を夫とするが、謎が解けなかった男は斬首刑に処す」と宣言されていました。実際に死刑が執行されるとき、ダッタンの元国王ティムールは息子のカラフと再会します。しかし、王子カラフはトゥーランドットに一目惚れし、父と召使いリューが制止するにもかかわらず謎解きに挑戦すると言い出しました。

カラフは見事に3つの謎を解きますが、トゥーランドットは結婚を拒みます。そこでカラフは「夜明けまでに私の名を解き明かせば、私は死にます」とトゥーランドットに謎を出しました。

トゥーランドットは「求婚者の名を解き明かすまで、誰も寝てはならぬ」と群衆に命を下します。父ティムールとカラフを密かに愛する召使いのリューは捕らえられてしまいますが、リューは拷問にかけられながらも口を割りません。そして、「愛があるから拷問にも耐えられる」といって自害します。

やがてカラフとトゥーランドットが二人になると、カラフは彼女にキスをします。トゥーランドットの冷たい心は、リューの献身とカラフの熱い想いで解けていきました。カラフが名を明かすと、トゥーランドットは「彼の名が分かった」と人々の前に向かいます。「彼の名は愛です」と叫ぶと、二人は抱き合い、人々の歓声のなかオペラは終わります。

「誰も寝てはならぬ」は、第3幕のカラフのアリアで、勝利の確信とトゥーランドットへの愛を歌い上げています。

▲1926年4月25日オペラ『トゥーランドット』公開時のポスター

▲1926年4月25日オペラ『トゥーランドット』公開時のポスター

「誰も寝てはならぬ 」原曲歌詞と日本語訳

Nessun dorma!

nessun dorma!

Tu pure, o Principessa,

nella tua fredda stanza,

guardi le stelle che tremano 

d’amore e di speranza.

誰も寝てはならぬ!

誰も寝てはならぬ!

あなたもです、お姫様

寒い部屋のなかで

愛と希望に震えながら

星を眺めているのです

Ma il mio mistero e chiuso in me, 

il nome mio nessun saprà!

No, no, sulla tua bocca, lo diro,

quando la luce splenderà!

けれども、私の秘密はこの胸のなかにあります

誰にも私の名はわからないでしょう!

ですが、夜が明ければ

あなたにそっと打ち明けましょう!

Ed il mio bacio scioglierà

 il silenzio che ti fa mia.

そして、私の口づけが沈黙を破り

あなたは私のものとなるのです

Dilegua, notte!

Tramontate, stelle!

All’alba vincero!

Vincero!Vincero!

夜よ、早く明けるがよい!

星よ、早く隠れるがよい!

夜が明ければ

私の勝ちです!勝つのです!