「パリの空の下(Sous le ciel de Paris)」は、パリを象徴する永遠のシャンソンの名曲として世界中で広く愛されています。
ユベール・ジロー(Hubert Giraud, 1920-2016)作曲、ジャン・ドレジャック(Jean Dréjac, 1921-2003)作詞により、1951年に発表されました。
「パリの空の下」歴史と解説

映画『パリの空の下セーヌは流れる(Sous le ciel de Paris coule la Seine)』のワンシーン
画像出典:https://www.arsenal-berlin.de/en/cinema/film-screening/1761/
この楽曲は、フランス映画『パリの空の下セーヌは流れる(Sous le ciel de Paris coule la Seine)』(1951年/監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ)のために制作された主題歌として誕生しました。
映画はセーヌ川周辺に生きるさまざまな人々の生活を描く作品で、その中で流れるこの歌は、パリの街そのものの姿や空気感を象徴する存在として位置づけられています。
きっかけは、脚本家アンリ・ジャンソンがテレビ番組で、ジャン・ドレジャックが自作の「シャンソン・ド・パリ」を歌う姿を偶然目にしたことでした。
ジャンソンはその場で強い印象を受け、すぐにジュリアン・デュヴィヴィエ監督へ連絡を取り、ドレジャックと作曲家ユベール・ジローに映画用の楽曲制作を依頼したとされています。


(左から)ジャン・ブルトニエール、エディット・ピアフ
画像出典:https://www.unifrance.org/annuaires/personne/381538/jean-bretonniere/https://www.imdb.com/name/nm0681191/
映画公開後、ジャン・ブルトニエールによる劇中歌唱に続き、多くのアーティストがカバーを行いました。中でもエディット・ピアフやイヴ・モンタン、ジュリエット・グレコらによるバージョンが人気を博し、シャンソンのレパートリーとして不動の地位を築きました。
英語版「Under Paris Skies」としても歌われ、アンディ・ウィリアムスやビング・クロスビーなどが録音するなど、世界各国で親しまれるスタンダード・ソングとなっています。
さらに、2024年のパリオリンピック閉会式では、シャンソンの伝統を受け継ぐ形でこの曲が演奏され、時代を超えてパリの文化を象徴する楽曲であることが改めて示されました。
「パリの空の下」の意味

タイトル「Sous le ciel de Paris」は、直訳すると「パリの空の下で」。歌詞は、パリの街並みや人々の暮らしを詩情豊かに描写しています。
歌詞の中では、以下のようなパリを象徴する風景が登場するのが特徴です。
・ベルシー橋
・ノートルダム大聖堂周辺
・セーヌ川に浮かぶサン=ルイ島
加えて、散歩を楽しむ恋人たちや街角の哲学者、音楽家、道行く人々のささやかな日常が綴られています。
また、この歌が伝えるのはパリの華やかさだけではありません。街の喧騒や孤独、喜びや哀愁といったさまざまな感情が折り重なる、日常の瞬間すべてを受け止める「大きな空」の視点も重要なポイントです。
どんな出来事も包み込み、見守るような空の存在が、パリという都市の豊かな人間性と温かさを象徴しています。
「パリの空の下」原曲歌詞と日本語訳
【1番】
Sous le ciel de Paris
S’envole une chanson
Hum Hum
Elle est née d’aujourd’hui
Dans le cœur d’un garçon
Sous le ciel de Paris
Marchent des amoureux
Hum Hum
Leur bonheur se construit
Sur un air fait pour eux
パリの空の下
一つの歌が舞い上がる
それは今日 生まれたばかり
一人の青年の胸の中で
パリの空の下
恋人たちが歩いている
二人の幸せは
彼らのために作られた旋律に乗って
少しずつ形になっていく
Sous le pont de Bercy
Un philosophe assis
Deux musiciens quelques badauds
Puis les gens par milliers
Sous le ciel de Paris
Jusqu’au soir vont chanter
Hum Hum
L’hymne d’un peuple épris
De sa vieille cité
ベルシー橋の下には
腰を下ろす哲学者が一人
二人の音楽家と 何人かの野次馬
やがて何千もの人々が集まり
パリの空の下
夜になるまで歌い続ける
それは 古い都を愛する
人々の賛歌
Près de Notre Dame
Parfois couve un drame
Oui mais à Paname
Tout peut s’arranger
Quelques rayons
Du ciel d’été
L’accordéon
D’un marinier
L’espoir fleurit
Au ciel de Paris
ノートルダムの近くでは
ときに悲劇が芽生えることもある
けれどパリでは
すべてがどうにかなる
夏空から差し込む
いく筋かの光
船乗りの奏でる
アコーディオンの音色
希望は花開く
パリの空の下で
【2番】
Sous le ciel de Paris
Coule un fleuve joyeux
Hum Hum
Il endort dans la nuit
Les clochards et les gueux
Sous le ciel de Paris
Les oiseaux du Bon Dieu
Hum Hum
Viennent du monde entier
Pour bavarder entre eux
パリの空の下
楽しげな川が流れる
夜になると その流れは
浮浪者や貧しい人々を
そっと眠りへ誘う
パリの空の下
神様の鳥たちは
世界中から集まって
おしゃべりを楽しむ
Et le ciel de Paris
A son secret pour lui
Depuis vingt siècles il est épris
De notre Ile Saint Louis
Quand elle lui sourit
Il met son habit bleu
Hum Hum
Quand il pleut sur Paris
C’est qu’il est malheureux
そしてパリの空は
自分だけの秘密を持っている
二十世紀以上ものあいだ
サン=ルイ島に恋をしてきた
彼女が微笑むと
空は青い衣をまとう
パリに雨が降るとき
それは空が悲しんでいる証
Quand il est trop jaloux
De ses millions d’amants
Hum Hum
Il fait gronder sur nous
Son tonnerr’ éclatant
Mais le ciel de Paris
N’est pas longtemps cruel
Hum Hum
Pour se fair’ pardonner
Il offre un arc en ciel
もし空が
数えきれない恋人たちに
嫉妬してしまうと
雷鳴をとどろかせ
怒りをぶつける
それでもパリの空は
長く意地悪ではいられない
許しを請うように
虹をかけてみせる