コラム

ピアノの鍵盤はなぜ88鍵?人間の聴力との関係

白鍵と黒鍵のコントラストが美しいピアノの鍵盤。その鍵盤の数は88鍵あります。
どうして「88」なのでしょうか?
実は、人間の耳が聴き分けることができる音域と関係があるのです!

54鍵から88鍵に増えていった鍵盤

ピアノの原型となる楽器が作られたのは1700年前後、 イタリアの楽器製作家であるバルトロメオ・クリストフォリ・ディ・フランチェスコ(1655~1731) によって製作されました。
当時のピアノは54鍵だったと言われています。その後ピアノ音楽が発展するに伴って、幅広い表現力を求める作曲家たちの要望を受けて鍵盤数が増えていきました。
ヴェートーヴェンなどが活躍する19世紀後半には68鍵、そしてフレデリク・ショパンやフラント・リストなど、ピアノ演奏がどんどん発展していった頃には88鍵のピアノが定着しました。音域でいうと7オクターブと1/2です。

人間の聴力と鍵盤数の関係

人間の耳は20ヘルツ~20000ヘルツまでの音域を聴き取ることができるそうですが、実際に音程として聴き分けることができるのは4000ヘルツぐらいまでといわれています。現在の88鍵のピアノというのは一番低音の鍵盤が27.5ヘルツ高音の鍵が4186ヘルツなので、ちょうど人間の耳が音程として聴き分けられる範囲=88鍵の音域の範囲ということになります。
つまり、これ以上鍵盤数が増えたとしても人間の耳には、低音はゴロゴロとした響き、高音はキンキンとした響きにしか聴こえず、音域として認識されないばかりか単に不快な音・耳障りな音として耳に届いてしまうのです。

88鍵以上あるピアノも存在する

オーストリアのベーゼンドルファー社が製造するベーゼンドルファー・モデル290インペリアルという最上位機種は、鍵盤が97健あります。
音域を拡張したモデルを製造して欲しいという作曲家フェルッチョ・ブゾーリの要望で、1909年に初めて製造されました。通常の88鍵のピアノの音域が7オクターブと1/2というのに対し、低音を6度低くしたインペリアルは8オクターブの音域を出すことができます。
ピアノの左側・低音部にある追加鍵盤は、通常の88鍵と区別するために黒く塗られているのが特徴です。