「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen」は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756-1791)作曲のオペラ『魔笛 Die Zauberflöte』で、夜の女王(ソプラノ)によって第2幕で歌われるアリアです。「夜の女王のアリア」とも呼ばれています。
コロラトゥーラという技法が取り入れられ、非常に高い音域で歌われているので、ソプラノのなかでももっとも難しい曲と言われています。そのため、夜の女王を演じられるソプラノは世界でも数えるほどしかいません。
CMに起用されたこともあるため、聞き覚えのある方も多いでしょう。
モーツァルト『魔笛』の概要とあらすじ
『魔笛』はモーツァルトの晩年の最高傑作と言われ、絶大な人気を誇る作品です。
1791年9月30日にウィーン郊外にあるヴィーデン劇場で初演され、大成功を収めました。初演では自らが指揮を務めました。しかし、病に倒れて12月に35歳の生涯を閉じます。
*モーツァルトの死因については諸説あります。
物語の舞台は、ラムセス時代のエジプト。
タミーノ王子は大蛇に襲われるも、夜の女王の3人の侍女に救われます。夜の女王に「悪魔ザラストロに誘拐された娘のパミーナを助けてほしい」と頼まれます。侍女たちからパミーナの肖像画を見せられ、一目惚れしたタミーノは、鳥刺しのパパゲーノとともにパミーナの救出を引き受けました。救出には3人の童子が付き添うこととなり、タミーノには魔法の笛(魔笛)、パパゲーノには魔法の鈴が与えられます。
ザラストロの神殿で、奴隷頭のモノスタトスから逃げるパミーナをパパゲーノが見つけます。その一方で、タミーノは神官と話すうちに、本当の悪人は夜の女王なのだと気づくのでした。
引用:youtube|新国立劇場オペラ『魔笛』より Die Zauberflöte – New National Theatre, Tokyo
タミーノが魔法の笛を吹くと、パパゲーノとパミーナはタミーノのもとへ向かおうとしますが、モノスタトスに捕らえられそうになります。しかし、パパゲーノが魔法の鈴を鳴らし、難を逃れることができました。
ザラストロのもとに、パパゲーノとパミーナ、モノスタトスとタミーノがそれぞれ現れます。初めて会ったタミーノとパミーナは、お互いに惹かれ合います。一方、モノスタトスは罰を受けるのでした。
そして、ザラストロはタミーノとパパゲーノに試練を受けるよう宣告します。
一方パミーナのもとには、夜の女王が現れ「ザラストロを刺し殺せ」と命じ、短剣を渡します(夜の女王のアリア)。パミーナは悩みますが、ザラストロに「復讐よりも大切なものがある」と諭されます。
タミーノとパパゲーノへの最初の試練は、女性と話してはいけない「沈黙の試練」でした。なにも答えないタミーノに見捨てられたと思ったパミーナは、絶望のあまり死を選ぼうとしますが、3人の童子によって引き止められます。
そして、タミーノとパミーナは愛を再確認し、2人で火と水の試練を乗り越えます。
試練に失敗したパパゲーノは、老婆から若い娘に変身したパパゲーナを魔法の鈴の力で呼び、将来を誓い合うのでした。
夜の女王と侍女たちは神殿を襲撃しようとしますが、光に打ち勝つことはできません。ザラストロが神を讃え、タミーノとパミーナは祝福を受けながら幕を閉じます。
「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」原曲歌詞と日本語訳
Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen,
Tod und Verzweiflung flammet um mich her!
復讐の炎は地獄のように我が心に燃え
死と絶望がわたしの周りで燃え上がる!
Fühlt nicht durch dich Sarastro Todesschmerzen,
So bist du meine Tochter nimmermehr.
ザラストロに死の苦しみを与えないのであれば
もはやお前はわたしの娘ではない
Verstossen sei auf ewig,
Verstossen sei auf ewig,
Zetrümmert sei’n auf ewig
Alle Bande der Natur.
永遠に追放され
永遠に見捨てられるがよい
永遠に打ち砕かれよ
あらゆる本来の絆を
Wenn nicht durch dich
Sarastro wird erblassen!
Hört, Rachegötter,
hört der Mutter Schwur!
もしお前の手によって
ザラストロが殺されることがないのであれば!
聞け 復讐の神よ
母の誓いを聞くのだ!