オペラ

私の名はミミ『ラ・ボエーム』より 歌詞の意味・解説

Photo by The Metropolitan Opera

「私の名はミミ Mi chiamano Mimi」は、ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini, 1858-1924)作曲のオペラ『ラ・ボエーム La Bohème』の第1幕でミミ(ソプラノ)が歌うアリアです。

ロドルフォ(テノール)が自己紹介として歌うアリア「冷たい手を Che gelida manina」に続いて、ミミが「私の名はミミ」を歌って自己紹介します。2人が恋に落ちる見ごたえのあるシーンです。

この2曲はプッチーニの旋律美にあふれた名曲で、オペラ公演だけでなくコンサートなどでも聴くことが多いでしょう。

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プッチーニ『ラ・ボエーム』の概要とあらすじ

オペラ『ラ・ボエーム』の原作は、フランスの小説家アンリ・ミュルジェール(Henri Murger, 1822-1861)の小説『ボヘミアン生活の情景 Scènes de la vie de bohème』です。オペラは全4幕で構成されています。

英雄も悪者も登場することはなく、壮大な歴史物でもありません。パリに住む若者たちのリアルを描いた作品です。

物語は1830年代のパリが舞台。

芸術家の卵である詩人ロドルフォと画家マルチェッロ、哲学者コッリーネ、音楽家ショナールの4人は貧しいながらも、アパートの屋根裏部屋で暮らしていました。「クリスマスイブの夜なのだから4人でカフェに出かけよう」と提案すると全員賛成します。

ところがロドルフォは先に原稿を仕上げるために部屋に残ります。

そこに火を借りにきたのがお針子のミミでした。しかし、火は消えてしまい、鍵を失くしたミミのために暗闇で探す二人。実はロドルフォは鍵を見つけていたのですが、それをミミには隠し、自己紹介として「冷たい手を」を歌います。続いてミミも「私の名はミミ」を歌い自己紹介をします。そこで二人は恋に落ちたのでした。

それから二人は、仲間が待つカフェに行きました。ロドルフォが仲間にミミを紹介していると、そこへマルチェッロの元恋人であるムゼッタが現れます。二人はヨリを戻したのでした。

クリスマスから2ヶ月後の雪が降る日。ミミはロドルフォとの仲に不安を感じ、マルチェッロとムゼッタの働く居酒屋を訪ねました。相談していたところに、ロドルフォが登場し、ミミは物陰に隠れます。ロドルフォは、マルチェッロに「ミミの結核の病は深刻で、貧乏な自分とは別れたほうがいい」と打ち明けるのでした。この話を聞いていたミミは、別れようと決めます。そして、マルチェッロとムゼッタもまた喧嘩別れをしてしまいました。

さらに数ヶ月後。屋根裏部屋の男たちのもとに、ミミを連れたムゼッタがやってきます。ミミはすっかり衰弱し、死ぬ前にロドルフォに会うためにやってきたのです。

医者を呼ぶお金をつくるために仲間たちが出かけていくと、二人きりになったミミとロドルフォは、楽しかった思い出を語り合います。その間も衰弱していくミミ。やがてロドルフォと仲間たちに見守られて、ミミは息を引き取ります。ロドルフォは、ミミの名前を呼びながら泣き崩れるのでした。

「私の名はミミ」原曲歌詞と日本語訳

Si. Mi chiamano Mimì 
ma il mio nome è Lucia…
la storia mia è breve…
A tela e a seta ricamo in casa e fuori…
Son tranquilla e lieta 
ed è mio svago far gigli e rose…

ええ、私はミミと呼ばれています
でも、私の名前はルチアです
私の話は簡単なの
家や外でリンネルや絹に刺繍をしています
私はもの静かで、幸せ者です
楽しみはユリやバラをつくることです

Mi piaccion quelle cose 
che han sì dolce malia 
che parlano d’amor, di primavere,
che parlano di sogni e di chimere, 
quelle cose che han nome poesia…
Lei m’intende?

私はこんなことが好きです
とても甘い魔法を持ったもの
愛について、青春について語り
夢について、そして幻想について語る
詩という名を持つものが…
あなたなら分かりますよね?

Mi chiamano Mimì 
il perchè non so.
Sola mi fo il pranzo da me stessa.
Non vado sempre a messa 
ma prego assai il Signor.
Vivo sola soletta,
là in una bianca cameretta; 
guardo sui tetti e in cielo.

私はミミと呼ばれています
でも、それはなぜかは知りません
私はひとりでご飯を食べます
いつもミサに行くわけではありませんが
神様にお祈りを捧げています
私はひとりで暮らしています
あそこの白い小さな部屋で
そこから屋根の上を、そして空を眺めているのです

ma quando vien lo sgelo 
il primo sole è mio…
il primo bacio dell’aprile è mio

雪解けの季節になれば
最初の太陽は私のもの
春の4月の最初の口づけは私のもの

Germoglia in un vaso una rosa…
Foglia a foglia la spio!
Così gentile il profumo di fior!
Ma i fior ch’io faccio ahimè!
i fior ch’io faccio ahimè, non hanno odore!

鉢植えのバラが芽を出し
少しずつ花開いていくさまを見守っているのです
なんて優美なのでしょう 花の香りは!
でも、私がつくる花は ああ!
私がつくる花は 香りがないのです!

Altro di me non le saprei narrare:
sono la sua vicina 
che la vien fuori d’ora a importunare.

私のことでお話しできることはもうありません
私はあなたの隣人です
こんな時間にあなたのお仕事の邪魔をしてしまいました