ミュージカル

メモリー(Memory) 『キャッツ(CATS)』より 歌詞の意味・解説

「メモリー Memory」は、アンドリュー・ロイド・ウェバー(Andrew Lloyd Webber, 1948-)作曲のミュージカル『キャッツ CATS』で、おもに娼婦猫のグリザベラが歌うナンバーです。劇中ではいくつかのシーンで歌われます。

このせつなくも美しいバラードは、世界的に有名な曲となり、ミュージカルのなかで歌われるだけでなく、さまざまな歌手によってカバーされています。

2019年にアメリカで映画化され、翌年には日本でも公開されました。

ウェバー『キャッツ』の概要とあらすじ

『キャッツ』は、1981年5月11日にロンドンのニューロンドン劇場で初演されました。演出はトレバー・ナン(Trevor Nunn, 1940-)によるものです。

イギリスの文学者であるT・S・エリオット(Thomas Stearns Eliot, 1888-1965)の詩集『キャッツーポッサムおじさんの猫とつきあう法』にロイド・ウェバーが曲をつけ、ミュージカルにつくりあげました。ただし「メモリー」は、エリオットの未完の遺稿をもとに、トレバー・ナンによって作詞されています。

日本では、劇団四季によって1983年に新宿のキャッツ・シアター(仮設劇場)で初演されたのを皮切りに、全国でロングラン上演され、通算1万回を超える人気ミュージカルとなりました。

物語の舞台は、とある都会のゴミ捨て場。

たくさんのジェリクルキャッツが、年に一度の”ジェリクル舞踏会”のために集まってきました。この舞踏会が開かれるのは、天上に上り、新しい人生に生まれ変わることを許される「ただ一匹のジェリクル」を長老猫が選ぶためです。

このジェリクルキャッツに選ばれるのはどの猫か?

それぞれの猫たちのストーリーが語られているときに、娼婦猫のグリザベラがみすぼらしい姿で現れます。ところが、みんなは老いたメス猫のグリザベラに見向きもしません。

そんななか、長老猫オールド・デュトロノミーが登場し、舞踏会が始まりました。

舞踏会が終演を迎えると、再びグリザベラが現れて「メモリー」を歌います。残っていたのはオールド・デュトロノミーだけでした。

オールド・デュトロノミーが「本当の幸せとは何か」について語り、再び猫たちの紹介が始まります。

途中で、オールド・デュトロノミーが犯罪王マキャヴィティにさらわれてしまいますが、マジック猫ミストフェリーズの力を借りて無事に取り戻すことに成功します。

そして、とうとう「ただ一匹のジェリクル」を選ぶときがやってきました。そこにまた、グリザベラがやってきて、美貌を失ってもみんなに受け入れられることを願いながら「メモリー」を歌います。しかし、ジェリクルたちには彼女の想いが届きません。そのとき、赤ちゃん猫のシラバブが「メモリー」を歌うと、グリザベラに再び力が湧き上がり、二匹の歌声が響き渡ります。ようやくグリザベラの想いはジェリクルたちに伝わりました。

オールド・デュトロノミーは「ただ一匹のジェリクル」にグリザベラを選びます。天上に旅立つグリザベラ。

最後に、ジェリクルたちからの挨拶で幕を閉じます。

「メモリー 」原曲歌詞と日本語訳

劇団四季による日本語版「メモリー」の歌詞ではありません。

Memory

Turn your face to the moonlight

Let your memory lead you

Open up, enter it

If you find there

the meaning of what happiness is

Then a new life will begin.

メモリー

月明かりに振り返り

思い出に導かれるまま

扉を開け なかに入り

幸せとは何か、その意味を見いだせば

新たな人生が始まるの

Memory

All alone in the moonlight

I can smile at the old days

I was beautiful then

I remember the time

I knew what happiness was

Let the memory live again

メモリー

月明かりのなかに独り

過ぎ去りし日々に微笑みかける

かつての私は美しかった

あの頃のことを覚えているわ

幸せとは何かを知っていた頃のことを

思い出よ もう一度よみがえれ

Burnt-out ends of smoky days

The stale, cold smell of morning

The street’s lamp dies

Another night is over

Another day is dawning

くすぶった日々に燃え尽きて

よどんだ朝の冷たい匂い

街の灯りは消え 夜が終わる

新しい1日の夜明けがやってくる

Daylight, I must wait for the sunrise

I must think a new life

And I mustn’t give in

When the dawn comes

Tonight will be a memory too

And a new day will begin

デイライト 私は夜明けを待つわ

新しい人生のことを思うの

私はくじけたりなんかしない

夜明けがくれば

今夜もまた思い出になるから

そして新しい1日が始まるの

Sunlight through the trees in summer

Endless masquerading

Like a flower, as the dawn is breaking

The memory is fading

夏の木々から陽の光がこぼれる

終わりのない見せかけだけの日々

花のように 夜が明けるにつれ

思い出は色あせてゆく

Touch me, it’s so easy to leave me

All alone with the memory

Of my days in the sun

If you touch me

you’ll understand what happiness is

Look, a new day has begun

私に触れて 私を取り残すのは簡単よ

思い出とともに独りきり

太陽に照らされた日々よ

私に触れてくれたなら

幸せとは何かが分かるはずよ

ほら見て 新たな1日が始まったわ