クラシック名曲

エルガー『威風堂々』第1番より 歌詞の意味・解説

「威風堂々 Pomp and Circumstance March No.1」は、エドワード・エルガ―(Edward Elgar、1857-1934)により作曲されました。曲名に「March」とあるので行進曲です。エルガーは行進曲を5曲作曲しており、その中で一番有名なのがこの第1番です。

原題の由来は、シェークスピアの作品「オセロ」内の一節から。「Pomp and Circumstance」という言葉がセリフに出てくるのだそうです。直訳すると「華やかさと儀式」となり、式典や儀式の厳かさ、堂々とした雰囲気を表しています。

エルガー『威風堂々』第1番のエピソード

この『威風堂々』の初演は1901年、イギリスで開催されたクラシック音楽の祭典「プロムス」においてでした。当初から反響が高く、そのプロムスでの演奏会で2度のアンコールが求められたというエピソードがあります。

そして、国王エドワード7世から「歌詞をつけてはどうか」という提案があり、曲内のトリオ部分に歌詞をつけて、翌1902年、国王の為の『戴冠式頌歌』の終曲に採用しました。

その後も『威風堂々』は、毎年「プロムス」最終日の演奏会で必ず演奏されるようになり、現在、イギリスの「第2の国歌」として親しまれているのです。

エルガー『威風堂々』第1番 曲の構成や特徴

『威風堂々』は、序奏、主部、そして中間部のトリオにより構成されています。

雄々しい雰囲気で行進のリズムを力強く刻んでいく序奏。短いですが、その後の主部に入る前に、気を引き締めてくれ心の準備も整います。

そして主部。弦楽器が勇ましく力強い音と旋律でたたみかけるように演奏します。私はこの厚みのある弦楽器の音、演奏部分が印象深くて好きです。次いで管楽器がその旋律を受け継ぎ、華やかに、さらに力強く展開していきます。弦楽器と管楽器が呼応するように旋律を奏でる合間に、打楽器がビシッと入り、良いアクセントになっています。

雄々しく勇ましい主部に続くのは、トリオ。変わり目は少し速度を落として、静かに落ち着いた雰囲気でトリオに入っていきます。そこからは雄大で、どこまでも伸びやかに広がっていくような厳かなメロディーが、管楽器と弦楽器により展開します。ここでも盛り上げ役は打楽器。要所々々に入り、曲の高揚感が増していきます。

このトリオの主旋律の部分に、歌詞が作られました。今はあまり歌唱されることは少なく、インストルメンタルとしてそのまま奏でる演奏が大半のようです。

そして最後は主部とトリオの主旋律が交互に登場、クライマックスへ。力強く壮麗な音楽に、聴く側の心も湧きたちます。ラストは少し速度が上がり、オーケストラ全体で盛り上がる形で終わりを迎えます。曲が終わった直後は、演奏する側も何とも言えない高揚感に包まれ、鳥肌が立つような感覚になります。

広く愛され続ける『威風堂々』

歌詞の日本語訳を見ると、20世紀初頭のイギリス帝国主義の空気感が直に伝わってくるようです。現在あまり歌われなくなったのは、その点も一因になっているかもしれません。

ですが、曲や歌詞が作られた背景を知ると、この曲の持つ勇ましさや荘厳さにつながるものが見受けられ興味深く感じました。

『威風堂々』は、現在ではオーケストラコンサートだけでなく、さまざまな場面で演奏されたり、編曲されたりしています。それはイギリスにとどまらず、世界中に広がっています。アメリカでは学校の卒業式で使われるのが定番です。最近は日本でも、卒業式や入学式で流れることが多いようです。(ちなみに私は、大学の入学式で演奏した経験があります。)

トリオ部分の歌詞と日本語訳

〔Land of Hope and Glory〕
Land of Hope and Glory,
Mother of the Free,
How shall we extol thee,
Who are born of thee?
Wider still and wider
Shall thy bounds be set;
God,who made thee mighty,
Make thee mightier yet.
God,who made thee mighty,
Make thee mightier yet.

〔希望と栄光の国〕
希望と栄光の国、
自由の母よ、
あなた(国)より生まれた私たちは
どのようにあなた(国)を讃えようか?
より広く、さらに広く
あなた(国)の土地は広大になるでしょう
あなた(国)を強大にした神よ、
さらに偉大なものとしてください
あなた(国)を強大にした神よ、
さらに偉大なものとしてください


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