「冷たい手を Che gelida manina」は、ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini, 1858-1924)作曲のオペラ『ラ・ボエーム La Bohème』の第1幕でロドルフォ(テノール)が歌うアリアです。
『ラ・ボエーム』は世界中で上演されている人気のオペラで、なかでも「冷たい手を」はテノールが歌う名アリアとして知られています。
ロドルフォがミミの手をとって自己紹介する「冷たい手を」を歌い、ミミも自己紹介するアリア「私の名はミミ」を歌います。2人が恋に落ちる名シーンです。『ラ・ボエーム』は、これまでに何度も映画化されています。
プッチーニ『ラ・ボエーム』の概要とあらすじ
オペラ『ラ・ボエーム』は、フランスの小説家アンリ・ミュルジェール(Henri Murger, 1822-1861)の小説『ボヘミアン生活の情景 Scènes de la vie de bohème』が原作です。1896年2月1日にトリノのレージョ劇場で初演されました。初演の指揮はアルトゥーロ・トスカニーによるもので、まずまずの成功を収めています。全4幕。

物語の舞台は、1830年代のパリ。
アパートの屋根裏部屋で、詩人ロドルフォと画家マルチェッロ、哲学者コッリーネ、音楽家ショナールは貧しいながらも楽しい共同生活をしていました。クリスマスイブの夜、4人で出かけようとしますが、ロドルフォは原稿を仕上げるために後で合流することに。そこに火をもらいにやってきたのがお針子のミミでした。暗闇でミミが失くした鍵を探す二人は、「冷たい手を」と「私の名はミミ」を歌い、恋に落ちます。
そして、ミミを連れて仲間3人が待つカフェ・モミュスに行きます。すると、そこへマルチェッロの元恋人ムゼッタが現れ、二人はヨリを戻すことになりました。

翌年の2月。マルチェッロとムゼッタの働く居酒屋にミミが訪ねてきます。ロドルフォの態度が冷たいと相談しにきたのです。ミミは物陰に隠れて、居酒屋に入ってきたロドルフォの話を聞いてしまいます。マルチェッロに「ミミは結核の病を患い、貧乏な自分にはどうすることもできない」と語るロドルフォ。そのことを知ったミミは、ロドルフォに別れを告げるのでした。ちょうどその頃、マルチェッロとムゼッタも喧嘩別れをしてしまいます。
さらに数ヶ月後。相変わらず4人で暮らす男たちのもとにムゼッタがやってきます。今にも死にそうなミミを屋根裏部屋まで連れてきたのです。仲間たちはみんな、ミミのために手を尽くそうとお金の工面に出かけていきます。
二人きりになったミミとロドルフォは、かつて愛し合った日々を語り合います。初めて会った日、ロドルフォがすぐに鍵を見つけたのを知っていたと話すミミ。しばらくして仲間たちが戻ると、ミミは静かに永遠の眠りにつきました。そんなミミの傍らで泣き伏すところで幕が下ります。
「冷たい手を」原曲歌詞と日本語訳
Che gelida manina
Se la lasci riscaldar.
Cercar che giova?
Al buio non si trova.
なんて冷たい手なのでしょう
その手を温めさせてください
(鍵を)探しても仕方ないでしょう?
こんな暗闇では見つかりませんよ
Ma per fortuna è una notte di luna,
e qui la luna l’abbiamo vicina.
けれども幸運なことに今夜は月夜です
月が僕たちのそばにいます
Aspetti, signorina,
le dirò con due parole
chi son, e che faccio,
come vivo. Vuole?
待ってください お嬢さん
あなたに伝えたいことがあります
僕が何者なのか 僕が何をしているのか
どんな暮らしをしているのか?
聞いてもらえますか?
Chi son? Sono un poeta.
Che cosa faccio? Scrivo.
E come vivo? Vivo!
僕は何者なのか?
僕は詩人です。
何をしているのか? 書いています。
どんな暮らしをしているのか? 生きているんです!
In povertà mia lieta
scialo da gran signore
rime ed inni d’amore.
Per sogni e per chimere
e per castelli in aria,
l’anima ho milionaria.
貧しいけれども 僕の楽しみは
貴族のような贅沢をすることです
愛の詩や賛歌
夢や幻想
そして空想のお城のおかげで
大金持ちのような心を持っています。
Talor dal mio forziere
ruban tutti i gioelli
due ladri: gli occhi belli.
ときどき僕の宝石箱から
宝石をすべて盗んでしまうんです
2人の泥棒が 2つの美しい目が
V’entrar con voi pur ora,
ed i miei sogni usati
e i bei sogni miei,
tosto si dileguar!
今も あなたと一緒に入ってきて
僕がいつも見ている夢も
美しい夢も
あっという間に消え去ってしまいました!
Ma il furto non m’accora,
poiché, v’ha preso stanza
la dolce speranza!
でも盗まれても悲しくはありません
だって、代わりに甘い希望がやってきたから!
Or che mi conoscete,
parlate voi, deh! Parlate.
Chi siete?
Vi piaccia dir?
さて これで僕のことが分かりましたよね
今度はあなたの番です さあ話してください
あなたは誰ですか?
よかったら話してもらえませんか?