「ホフマンの舟歌 Barcarolle」は、ジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach, 1819-1880)作曲の全5幕のオペラ『ホフマン物語 Les Contes d’Hoffmann』の第4幕で歌われるソプラノとメゾソプラノの二重唱です。なお「ホフマンの舟歌」は通称で、「Belle nuit, ô nuit d’amour 美しい夜、おお、恋の夜」が原曲のフランス語タイトルとなっています。
「ホフマンの舟歌」は非常に美しい旋律で、多くの映画で使用されています。特に有名なのは、1997年公開のイタリア映画『ライフイズビューティフル Life is beautiful』。
過酷な強制収容所の中で主人公が流す印象的な音楽として使われていました。オッフェンバックは、運動会のときによく使われる「天国と地獄」の作曲家として有名です。
オッフェンバック『ホフマン物語』の概要とあらすじ
オペラ『ホフマン物語』は、作曲家のオッフェンバックが未完のまま1880年に死去してしまい、翌年にエルネスト・ギローの補筆によって完成しました。翌年2月10日にパリのオペラ=コミック座で初演されています。もっとも有名な「ホフマンの舟歌」は、オッフェンバックのドイツ語オペラ『ラインの妖精』からの流用です。
『ホフマン物語』はいくつかの版があり、ギロー版は4幕、ほかの版は5幕で構成されています。それぞれストーリーが微妙に異なっており、削除されている場面もあるため、あらすじは一般的なものを紹介します。
ルーテルの酒場

ある日の夜、詩人のホフマンは学生たちにせがまれて、かつて恋した3人の女性との恋愛話を語り始めます。女神ミューズは、ホフマンの親友ニクラウスに変身し、彼を見守っていました。
1人目はオランピア

画像出典:https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/14_lyon/story.html
ホフマンは、物理学者のスパランツァーニの娘オランピア(実は自動人形)に一目惚れしてしまいます。ニクラウスは「精巧な人形」だと歌いますが、その意味を理解できません。
それを見ていたコッペリウス博士は、ホフマンに不思議な「眼鏡」を売りつけます。その眼鏡は、人形がまるで本物の人間に見えるという代物でした。
オランピアが人間だと信じて疑わないホフマンは、一緒にダンスを踊り始めます。するとオランピアが勢いで暴走し、ホフマンを突き飛ばしてしまいました。そのとき、ホフマンの眼鏡がはずれて、初めて彼女が人形であることに気づきます。ショックを受けたホフマンは、その場で失神してしまうのでした。
2人目はアントニア

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場所はミュンヘンのクレスペルの家。娘のアントニアは歌手になることを夢見ていましたが、死んだ母親の声に似ているため、父親から歌うことを禁じられていました。
ホフマンとアントニアは恋仲で、結婚を誓い合います。そのとき、アントニアが「歌を禁じないでほしい」と願い出たことを不思議に思うホフマン。
そこに悪魔的な医者ミラクル博士がやってきて、アントニアの診察をおこない「薬と歌」を強く勧めます。一度はクレスペルに追い出されたミラクル博士は、またもや彼女のもとに現れ、歌うように唆すのでした。その誘惑に打ち勝とうと、亡き母に救いを求めますが、母の亡霊にあおられて激しく歌い出し、倒れてしまいます。
ホフマンが駆けつけたときには、彼女はすでに息絶えていたのでした。
3人目はジュリエッタ

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ヴェネツィアの館で、娼婦のジュリエッタと(女神ミューズが変身した)ニクラウスが夢見る恋の歌「ホフマンの舟歌」を歌います。そこにやってきたのが、彼女の情夫シュレミールとダぺルトゥット船長でした。ジュリエットは、船長の船長のダイヤの指輪に心を奪われます。ニクラウスはジュリエッタに気をつけるように忠告しますが、ホフマンは「娼婦だから大丈夫」だと相手にしません。
一方でダペルトゥットはダイヤをちらつかせ、ジュリエッタに対して、賭場でカードをしている間にホフマンを誘惑して彼の影を盗むようにそそのかしました。ジュリエッタにまんまと騙されたホフマンは、影を差し出してしまいます。
気を失ったホフマンが気がついたとき、ジュリエッタは成功を祝してワインを飲み干すところでした。しかし、それはダペルトゥットが口封じのために策を講じた毒入りワインだったのです。罠に掛かったジュリエッタは、ホフマンの腕の中で息を引き取ります。
再びルーテルの酒場

3人の女性との失恋を語り終えたホフマンは、酒を煽ります。そこへひそかに恋心を寄せていたステラがやってきました。しかし、ステラは別の男とどこかへ立ち去ってしまいます。恋に破れ、絶望したホフマンはそのまま命を絶ってしまいました。
舞台が暗転すると、その場に現れたのは女神ミューズでした。ミューズは詩人としてホフマンを蘇らせます。ミューズだけが、ずっとホフマンの味方だったのです。
「ホフマンの舟歌」原曲歌詞と日本語訳
Belle nuit, ô nuit d’amour,
Souris à nos ivresses.
Nuit plus douce que le jour,
Ô belle nuit d’amour!
美しい夜、ああ、恋の夜よ
ほろ酔いの姿に微笑むがいい
昼間よりも甘い夜
ああ、美しき恋の夜よ!
Le temps fuit et sans retour
Emporte nos tendresses
Loin de cet heureux séjour,
Le temps fuit sans retour.
過ぎゆく時間は二度と戻らない
優しさも運び去っていく
この幸せな日々から遠ざかり
戻ることなく、時は過ぎゆく
Zéphyrs embrasés,
Versez-nous vos caresses,
Zéphyrs embrasés,
Donnez-nous vos baisers,
Vos baisers, vos baisers. Ah!
そよ風よ、抱きしめて
私たちをそっと撫でて
そよ風よ、抱きしめて
私たちをそっと撫でて
口づけをしておくれ
口づけを さあ口づけを
Belle nuit, ô nuit d’amour,
Souris à nos ivresses.
Nuit plus douce que le jour,
Ô belle nuit d’amour!
Ô belle nuit d’amour!
Ah! souris à nos ivresses.
Nuit d’amour, ô belle nuit d’amour!
美しい夜、ああ、恋の夜よ
ほろ酔いの姿に微笑むがいい
昼間よりも甘い夜
ああ、美しき恋の夜よ!
ああ、美しき恋の夜よ!
ほろ酔いの姿に微笑むがいい
恋の夜よ ああ、美しき恋の夜よ!