「乾杯の歌 Libiamo ne’lieti calici」は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi, 1813-1901)作曲のオペラ『椿姫(La Traviata)』第一幕の冒頭で歌われる曲です。アルフレードが乾杯の音頭を取るところから始まり、続いて全員の合唱、ヴィオレッタのソロ、そして全員の合唱からアルフレードとヴィオレッタの歌へ続き、最後に全員の合唱で終わります。
華やかで活気のある曲調であるため、CMソングやドラマ・映画などでもよく使われています。曲が流れれば「あぁ、この曲ね」とすぐにわかるほど有名です。
ヴェルディ『椿姫』の概要とあらすじ
『椿姫』は、1853年3月6日にヴェネツィアのフェニーチェ劇場で初演されました。ヴェルディが40歳のときの作品です。ところが、『椿姫』の初演はブーイングの嵐で失敗だったと言われています。
その理由は「キャスティングの問題」「準備不足」「ヒロインが結核で死ぬストーリー設定のせい」など諸説あります。
その後、再演を重ねるにつれて人気の演目となり、現在ではもっとも上演回数の多いオペラとなりました。
『椿姫』の原作はフランスの作家アレクサンドル・デュマ・フィスです。デュマ・フィス自身も『椿姫』を戯曲化し、人気の舞台となりました。
オペラの原題『ラ・トラヴィアータ(La Traviata)』は「道を踏み外した女」を意味します。日本では、原作のタイトル『椿姫』で親しまれるようになりました。
物語の舞台は、19世紀半ばのフランス・パリの社交界。
青年貴族のアルフレードは、パリの社交界の華であるヴィオレッタに恋をします。高級娼婦である彼女は、本物の愛を信じられません。
しかし、アルフレードによる情熱的な求愛で、ヴィオレッタは真実の愛を知ります。
ところがアルフレードの父ジェルモンは交際を認めず、策略によって二人を引き離します。
いくつもの困難を乗り越え、ようやく二人が再会を果たしたときには、ヴィオレッタは結核で絶命寸前の状態でした。アルフレードの腕の中で、ヴィオレッタが最期を遂げたところでオペラは終わります。
「乾杯の歌」は、第一幕の冒頭、アルフレードが乾杯の音頭を取り、二人が出会うシーンで歌われます。社交界の華やかさを見事に表現した曲です。
歌詞を見ていくと、ヴィオレッタが愛を信じていないことがわかるでしょう。
「乾杯の歌 Libiamo ne’lieti calici」原曲歌詞と日本語訳
Alfredo アルフレード
Libiam ne’ lieti calici che la bellezza infiora,
E la fuggevol ora s’inebri a voluttà.
Libiam ne’ dolci fremiti che suscita l’amore,
Poiché quell’occhio al core onnipotente va.
Libiamo, amor fra i calici
Più caldi baci avrà.
乾杯しよう、美しく飾られた喜びの杯に
そして、つかの間のあいだ喜びに酔いしれる
乾杯しよう、愛がもたらす甘美な震えの中で、
その瞳が絶対的な力で心に向けられるから
乾杯しよう、愛は杯の間で、
より熱い口づけを手に入れることだろう
Tutti 全員
Libiamo, amor fra i calici
Più caldi baci avrà.
乾杯しよう、愛は杯の間にあり、
より熱い口づけを手に入れることだろう
Violetta ヴィオレッタ
Tra voi saprò dividere il tempo mio giocondo;
Tutto è follia nel mondo ciò che non è piacer.
Godiam, fugace e rapido è il gaudio dell’amore;
È un fior che nasce e muore,né più si può goder.
Godiam c’invita un fervido accento lusinghier.
皆さんとなら、私の楽しい時間を分かち合えるでしょう
この世のすべては狂気なの、喜び以外は
楽しみましょう、束の間で、はかない愛の喜びを
咲いては散る一輪の花のように、楽しめなくなる前に
楽しみましょう、私たちを招いている、焼けつくような喜ばしい言葉を
Tutti 全員
Godiam la tazza e il cantico la notte abbella e il riso;
In questo paradiso ne scopra il nuovo dì.
楽しもう、杯と歌を、そして美しき夜と笑いを
この楽園で新たな一日が見つかるだろう
Violetta&Alfredo ヴィオレッタ&アルフレード
La vita è nel tripudio.【V】
Quando non s’ami ancora.【A】
Nol dite a chi l’ignora.【V】
È il mio destin così【A】
人生は快楽の中にあるものよ【ヴィオレッタ】
本当の恋を知るまではそうでしょうね【アルフレード】
恋を知らない私にそんなこと言わないでちょうだい【ヴィオレッタ】
それが僕の運命なのです【アルフレード】
Tutti 全員
Godiam la tazza e il cantico la notte abbella e il riso;
In questo paradiso ne scopra il nuovo dì.
楽しもう、杯と歌を、そして美しき夜と笑いを
この楽園で新たな一日が見つかるだろう