「ラ・メール La Mer」は、シャルル・トレネ(Charles Trenet, 1913-2001)作詞・作曲により、1946年に発表されました。
エディット・ピアフの「バラ色の人生」と並んでフランスで最も売れた楽曲とされる、シャンソンを代表する不朽の名作です。

「ラ・メール」歴史と解説

トレネは16歳のときにこの曲の元となる詩を書きましたが、その詩は長らく手つかずのままになっていました。

1943年、モンペリエとペルピニャンの間を鉄道で旅していたトレネが、南仏の「トー湖(Étang de Thau)」と呼ばれるラグーンの眺めを目にした瞬間、かつて書いた詩のメロディが突然心にわき起こったといいます。

トレネはピアニストのレオ・ショーリアックの力を借りて急いで曲をまとめ、その日の夜には人々の前で披露しました。

1945年にローラン・ジェルボーが初めてこの曲を歌い、翌1946年にトレネ自身が発表したシングルが大ヒットとなりました。

以後、世界中の非常に多くのミュージシャンによってカバーされ続け、フランスを代表する古典的名曲としての地位を確立しています。

1960年には、ボビー・ダーリンが英語詞を付けて「Beyond the Sea(ビヨンド・ザ・シー)」として発表し、Billboard Hot 100で6位を記録する大ヒットとなりました。

ベニー・グッドマン(1948年)やロジャー・ウィリアムズ(1955年)、ビング・クロスビー(1953年のアルバム『ル・ビング』に収録)など、多くのアーティストによって歌われ、演奏され続けています。日本でも旗照夫らが日本語詞で歌っています。

「ラ・メール」の意味

フランス語のオリジナル版は、海の様子が移ろっていく情景を叙情的に称える詩的な楽曲です。
入江に沿って踊るように輝く海、雨に打たれて表情を変える海、夏の空に浮かぶ白い雲を天使と見間違えるほど清らかな海など、様々に姿を変える海の情景が、絵画的なイメージの連なりとして描かれています。

池のほとりの葦、白い鳥たち、錆びた色の家々といった海辺の風景も歌詞の中に織り込まれ、海がそれらすべてをそっと包み込み、揺り動かしてくれるような、包容力のあるイメージで歌われています。

最後には、そうした海の情景が愛の歌となって、歌い手の心を永遠に慰めてくれるという形で締めくくられます。

一方、英語版「Beyond the Sea」はタイトルに「彼方に(Beyond)」という言葉を加えることで、海の情景描写というよりも、海を隔てた恋人への思いを歌うラブソングへと内容が変えられており、フランス語版とは異なる魅力を持つ楽曲として親しまれています。

トレネ自身の作品は、恋やパリ、少年時代の思い出をテーマにしたものが多く、この「ラ・メール」も、彼が少年期を過ごした南仏ナルボンヌ近郊で目にした地中海の記憶が結実したものと考えられています。

「ラ・メール」原曲歌詞と日本語訳

La mer
Qu’on voit danser le long des golfes clairs
A des reflets d’argent, la mer
Des reflets changeants sous la pluie

海
澄みわたる湾に沿って、踊るように見える海
銀色の輝きをたたえた海
雨の中で、そのきらめきは移ろっていく

La mer
Au ciel d’été confond ses blancs moutons
Avec les anges si purs, la mer
Bergère d’azur infinie

海
夏空に浮かぶ白い雲の群れを
清らかな天使たちと見まがう海
果てしない青空の羊飼いよ

Voyez près des étangs ces grands roseaux mouillés
Voyez ces oiseaux blancs et ces maisons rouillées

池のほとりに立つ、雨に濡れた背の高い葦をごらん
あの白い鳥たちと、錆色に染まった家々をごらん

La mer
Les a bercé le long des golfes clairs
A des reflets d’argent, la mer
A bercé mon cœur pour la vie

海
澄みわたる湾に沿って、それらを優しく揺らし
銀色の輝きをたたえた海は
私の心を生涯にわたって包み込んだ

La mer
Qu’on voit danser le long des golfes clairs
A des reflets d’argent, la mer
Des reflets changeants sous la pluie

海
澄みわたる湾に沿って、踊るように見える海
銀色の輝きをたたえた海
雨の中で、そのきらめきは移ろっていく

La mer
Au ciel d’été confond ses blancs moutons
Avec les anges si purs, la mer
Bergère d’azur infinie

海
夏空に浮かぶ白い雲の群れを
清らかな天使たちと見まがう海
果てしない青空の羊飼いよ

Voyez près des étangs ces grands roseaux mouillés
Voyez ces oiseaux blancs et ces maisons rouillées

池のほとりに立つ、雨に濡れた背の高い葦をごらん
あの白い鳥たちと、錆色に染まった家々をごらん

La mer
Les a bercé le long des golfes clairs
A des reflets d’argent, la mer
A bercé mon cœur pour la vie

海
澄みわたる湾に沿って、それらを優しく揺らし
銀色の輝きをたたえた海は
私の心を生涯にわたって包み込んだ