街が色とりどりのイルミネーションで彩られるクリスマス。
家族や友人と特別な時間を過ごす人も多いのではないでしょうか。
そんなクリスマスの雰囲気を一層盛り上げるクラシック音楽を8曲を紹介します。
清しこの夜
世界中で愛されるクリスマスキャロル「清しこの夜(Stille Nacht, Heilige Nacht)」。1818年、オーストリアの神父ヨゼフ・モール(Joseph Mohr 1792 – 1848)が詩を書き、教会のオルガン奏者フランツ・グルーバーが曲をつけました。初演は、オルガンが壊れてしまったため、ギター伴奏で歌われたと伝えられています。
この曲は、シンプルながら心に染み入る旋律で、クリスマスの平和と希望を象徴する存在となりました。第一次世界大戦中にフランス、イギリス、ドイツの敵対する兵士たちがこの曲を一緒に歌い、戦闘が一時的に中断された「クリスマス休戦」のエピソードは歴史的にも有名です。戦争の最中にも関わらず、この曲を通じて生まれた一瞬の平和は、今も多くの人々の心に残る感動的な出来事として知られています。
もろびとこぞりて
原題「Joy to the World」は、聖書の詩篇をもとに作られた賛美歌。18世紀のイギリス詩人アイザック・ワッツ(Isaac Watts 1673 – 1748)による詞に、ジョージ・フリードリヒ・ヘンデル(George Frideric Handel 1685 – 1759)の影響を受けた旋律が付けられています。この曲は、ワッツが聖書の詩篇98篇を基に「全地よ、主に向かって喜びの声をあげよ」というメッセージを込めて詩を書いたことが始まりでした。
曲の旋律そのものは、ヘンデルがオラトリオ「メサイア」の中で使用したフレーズがヒントになったとも言われていますが、実際に「Joy to the World」の形に整えたのは19世紀のアメリカの作曲家ロウェル・メイソン(Lowell Mason 1792 – 1872)です。彼はヘンデルの音楽を参考にしながら、この喜びに満ちたクリスマスキャロルを完成させました。
英語圏で愛されているこの曲は、陽気なリズムが特徴で、聴くだけで心が弾むような喜びをもたらしてくれます。クリスマスミサや学校の合唱でもよく歌われる、祝祭感たっぷりの一曲です。
ひいらぎかざろう
「Deck the Halls」として知られるこの曲は、16世紀のウェールズ民謡がルーツ。もともとはクリスマスソングではなく、新年を祝う内容の歌でしたが、19世紀にアメリカの音楽家トーマス・オリファント(Thomas Oliphant 1799 – 1873)によって英語詞が書かれ、クリスマス向けの歌詞に改められました。
オリファントは、ウェールズ音楽の収集と普及に力を注いだ人物で、この曲の楽しい旋律をクリスマスにふさわしい歌詞とともに広めたいと考えたようです。軽快で賑やかなメロディに「ファララララ」というおなじみのフレーズが加わり、楽しい気分を盛り上げます。
クリスマスツリーの飾りつけやパーティーシーンでこの曲を流せば、子どもも大人も笑顔になれること間違いなしです。
くるみ割り人形「金平糖の踊り」/チャイコフスキー
チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」は、クリスマスをテーマにしたファンタジーの世界を描いた作品。物語は、クリスマス・イヴの夜に始まり、少女クララとくるみ割り人形が繰り広げる冒険を描いています。その中でも「金平糖の踊り」は、金平糖の妖精が美しく舞う場面を描写した繊細で美しい曲です。
この曲では、チェレスタという独特の音色を持つ楽器が使われています。チェレスタは、チャイコフスキーが初めてバレエ音楽に採用されたことで知られ、そのキラキラと輝くような音色が曲全体に魔法のような雰囲気を与えています。実際の舞台で妖精の踊りを観るのも素敵ですが、音楽だけでも夢の世界に浸れる名曲です。お子さんと一緒に聴きながら、金平糖の妖精が舞う光景を想像してみてはいかがでしょうか。
四季 12月「クリスマス」/チャイコフスキー
ピアノ曲集「四季」は、12の月ごとの情景を音楽で描いたチャイコフスキーの作品。その中の最終曲「12月 クリスマス(クリスマスの歌)」は、家族で囲む暖炉のぬくもりや、静かな雪の夜の安らぎを感じさせる温かい一曲です。
この曲はチャイコフスキーがロシアの寒い冬を背景に、クリスマスの家庭的で穏やかな情景を込めたとも言われています。ゆったりとしたメロディは、家族と一緒に静かで落ち着いた時間を過ごすクリスマス・イヴのBGMにぴったりです。
主よ、人の望みの喜びよ/バッハ
バッハのカンタータ第147番「心と口と行いと生活で」に含まれる「主よ、人の望みの喜びよ」は、厳粛で崇高な雰囲気が特徴です。この曲のメロディは、どこか安心感を与える調和の取れた美しさを持ち、ピアノやオルガン、弦楽器での編曲も多く、クリスマスの厳かで神聖なムードを演出します。
さらに、この曲は結婚式の場面でもよく演奏されることから、家族や大切な人と過ごすクリスマスに特別な意味と温かさを添えてくれることでしょう。心静かに祈りを捧げる時間や、教会での礼拝にもぴったりの一曲です。
クリスマス・オラトリオ/バッハ
バッハの「クリスマス・オラトリオ(Christmas Oratorio)」は、1734年に初演された6部構成の大作で、クリスマス期間中に演奏されることを目的に作られました。各部がイエス・キリストの誕生にまつわる場面を描いており、特に「第1部」の冒頭は輝かしいファンファーレと力強いコーラスで幕を開け、キリスト降誕を祝う壮大な雰囲気が特徴です。
バロック時代の荘厳さと祝祭感が詰まったこの曲は、クリスマスの喜びと感動が心に染みわたります。壮麗な音楽に身を委ねながら、当時のクリスマスの荘厳な儀式の情景を思い浮かべるのも良いでしょう。
アヴェ・マリア/シューベルト
シューベルトが作曲した「アヴェ・マリア(Ave Maria)」は、クリスマスの聖夜にぴったりの曲。厳密には、ラテン語の「アヴェ・マリア」の祈りを基にしたものではなく、スコットランドの詩人ウォルター・スコット(Walter Scott 1771 – 1832)の詩「湖上の美人(The Lady of the Lake)」を元にした作品ですが、宗教的な雰囲気と深い美しさが際立っています。
ソプラノやバイオリンによる演奏は、この曲の透明感をさらに引き立て、クリスマスの静かで神聖な夜を彩るのにおすすめです。心を静め、癒しのひとときをもたらしてくれるこの曲は、家族や大切な人とともに過ごすクリスマスをさらに特別なものにしてくれることでしょう。