「サンタ・ルチア Santa Lucia」は古くからの伝統的なナポリ民謡で、1849年にテオドロ・コットラウ (Teodoro Cottrau, 1827-1879)が編曲して出版しました。
バルカロール(舟歌)の特徴である三拍子のゆったりとした優雅な曲調は、美しい港町の景色を連想させます。
ナポリ民謡の中でも「オー・ソレ・ミオ」「フニクリ・フニクラ」と並ぶ三大名曲のひとつとして広く知られ、エンリコ・カルーソー、マリオ・ランツァ、ルチアーノ・パヴァロッティ、アンドレア・ボチェッリ、さらにはエルヴィス・プレスリーまで、時代を超えて多くの歌手に歌われてきました。
「サンタ・ルチア」歴史と解説
サンタ・ルチアとは、美しいナポリ湾に面したサンタ・ルチア港を含む海岸沿い一帯の名前です。遠くにはヴェスヴィオ山が見え、世界一美しい港町と言われており、現在でもイタリアのでも観光名所のひとつになっています。
「サンタ・ルチア Santa Lucia(英名Saint Lucy) 」という地名は、別名「シラクサのルチア」と呼ばれる4世紀頃のキリスト教の殉教者、聖ルチアの名前から由来しています。
聖ルチアは迫害を受けて拷問として両目をくり抜かれましたが、奇跡が起きて、目がなくても見ることができたと言われています。
そのため、聖ルチアはお皿の上に眼球を載せた姿で描かれています。
また、このような伝説から聖ルチアは目の守護聖人としても知られています。


ルチアLuciaはラテン語で光を意味するLuxまたはLucidから派生した名前であることから、冬の夜が長い北欧の国々では「光の祭り」とルチアへの信仰が結びつき、12月13日には「聖ルチア祭」が行われています。
「サンタ・ルチア」曲の誕生と広がり
この曲の原型が生まれたのは、1830年代頃だといわれています。
ミケーレ・ツェッツァ(Michele Zezza,1780–1867)、作詞、A.ロゴ(A. Longo)作曲とされる「Lo varcaiuolo de Santa Lucia(サンタ・ルチアの舟乗り)」という曲が、ナポリ語(方言)でナポリ周辺に広まったのが始まりです。
その後、フランス生まれのイタリア人音楽家でありテオドロ・コットラウの父、グリエルモ・コットラウ(Guglielmo Cottrau, 1797-1847)が、ナポリ民謡の採譜・収集に尽力し、ナポリ民謡の普及に貢献。シリーズ出版『音楽の楽しみ(Passatempi Musicali)』に「サンタ・ルチア」も収録されました。
そして1849年、グリエルモの息子テオドロが、この曲を舟歌(バルカロール)として編曲・出版。ナポリ語の歌詞を始めて標準のイタリア語に翻訳しました。
「サンタ・ルチア」はナポリで毎年開催されるピエディグロッタ祭(Piedigrotta Festa)の歌謡コンクールで演奏され、広く知られるようになりました。
1961年、イタリア王国が建国され、標準イタリア語の普及が全国的に推進される中、その象徴的な存在として、「サンタ・ルチア」は標準イタリア語とともに全国に広がりました。
19世紀になると、アメリカで英語版が出版され、世界各国で翻訳されて歌われるようになりました。
日本で最初に歌われたのは、1930年代。堀内敬三が訳した「月は高く海に照り」から始まる歌詞は、音楽の教科書にも長年掲載され、多くの日本人にも馴染みのある曲となりました。
その後も各国で数多くの歌手が歌い、映画や映像作品でもたびたび登場し、三大カンツォーネと呼ばれるほど、世界中に広く知られる曲となったのです。
「サンタ・ルチア」原曲歌詞と日本語訳
【1番】
Sul mare luccica l’astro d’argento.
Placida è l’onda, prospero è il vento.
銀色の星が輝く海
波は穏やかに 風はそよぐ
Venite all’agile barchetta mia,
Santa Lucia! Santa Lucia!
わたしの小舟においで
サンタ・ルチア!
【2番】
Con questo zeffiro, così soave,
O, com’è bello star’ sulla nave!
ゼファーとともに
なんと美しい、船の上のもの
※ゼファー:ギリシア神話に登場する風神の神。よそ風、やさしい風という意味を持つ。
Su passeggeri, venite via!
Santa Lucia! Santa Lucia!
乗り人よ、行こう
サンタ・ルチア!
【3番】
In fra le tende, bandir la cena
In una sera così serena,
テントの中で夕食の準備を
こんな穏やかな夜に
Chi non dimanda, chi non desia.
Santa Lucia! Santa Lucia!
誰も望んでなどいない
サンタ・ルチア!
【4番】
Mare sì placida, vento sì caro,
Scordar fa i triboli al marinaro,
穏やかな海、心地よい風
苦しみも忘れてしまう
E va gridando con allegria,
Santa Lucia! Santa Lucia!
大きな声で陽気に
サンタ・ルチア!
【5番】
O dolce Napoli, o suol beato,
Ove sorridere volle il creato!
美しいナポリ 豊かな土地
創造主も笑顔になる
Tu sei l’impero dell’armonia!
Santa Lucia! Santa Lucia!
あなたは調和の帝国
サンタ・ルチア!
【6番】
Or che tardate? Bella è la sera.
Spira un’auretta fresca e leggiera.
何を待つのか、美しい夕暮れに
新鮮な風が吹く
Venite all’agile barchetta mia,
Santa Lucia! Santa Lucia!
私の小舟においで
サンタ・ルチア!
美しいナポリの港町、穏やかな波、そよぐ風、揺れる小船・・・
悠々とした三拍子のメロディは、晴れた日の海辺で歌いたくなる曲です。
カンツォーネの定番曲が揃ったおすすめの楽譜です。
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