「レジネッラ Reginella」は、リベロ・ボヴィオ(Libero Bovio, 1883-1942)作詞、ガエターノ・ラーマ(Gaetano Lama)作曲により、1917年に発表されました。
カンツォーネ・ナポレターナの代表的な名曲として広く知られている曲です。
「レジネッラ」歴史と解説

作詞を手がけたリベロ・ボヴィオは、20世紀初頭のナポリ方言による戯曲・詩・歌の復興に貢献した詩人・作詞家の一人。新聞社などで働いた後、ナポリ音楽の出版に携わる小さな会社「Canzonetta」の代表となりました。
彼が手がけた戯曲集は1923年に、詩集は1928年に出版されています。生涯で600曲ほどのナポリ歌謡の歌詞を手がけたことで知られ、「レジネッラ」のほか「パッシオーネ」「’O paese d’ ‘o sole」、1925年発表でアメリカに渡ったナポリ移民の哀愁を描いた「Lacreme napulitane」などが代表作として挙げられます。
「レジネッラ」は発表から100年以上が経った今も色褪せることなく歌い継がれており、映画「ナポリの饗宴」の中でジャコモ・ロンディネッラが歌ったバージョンや、伝統的カンツォーネ・ナポレターナの代表的歌い手として知られるロベルト・ムローロが1960年代に録音したシンプルで原曲に忠実なバージョンなど、数多くの名唱で知られています。
「レジネッラ」の意味
タイトルの「レジネッラ(Reginella)」は「かわいい女王様」「お嬢様」といったニュアンスを持つ言葉で、歌詞の中ではかつての恋人の女性を指しています。
歌詞の内容は、終わってしまった恋を振り返る男性の心情を描いたもの。

ある夜、街でかつて恋人だった女性と偶然再会した男性。彼女は胸元の開いた華やかなドレスと帽子を身にまとい、取り巻きに囲まれてフランス語を話すような女性に変わっていました。
男性は、貧しくとも幸せだった昔の二人の暮らしを思い出します。パンとさくらんぼだけで満足し、口づけだけで生きていけるほど愛し合っていた、あの頃を懐かしみます。
「僕は君を愛した、君も僕を愛してくれた、今はもう愛し合っていないけれど、時々ふと、君は僕のことを思い出すのだろう」という印象的なリフレインが繰り返され、過ぎ去った恋への未練とほろ苦い郷愁が歌われています。
歌詞の最後では、小鳥(カルディッロ=ヒワ)に語りかけ、鳥かごを開けて自由に飛び立たせるように、自らも過去の恋への執着から解き放たれようとする男性の心情が描かれ、短いながらも多層的な余韻を残す詩として知られています。
「レジネッラ」原曲歌詞・日本語訳
1
e si’ fatta na vesta scullata,
nu cappiello cu ‘e nastre e cu ‘e rrose,
stive ‘mmiez’a tre o quatto sciantosee parlave francese, è accussí?
Fuje ll’autriere ca t’aggio ‘ncuntrata
fuje ll’autriere a Tuleto, ‘gnorsí!
君は胸元の開いた服を着て
リボンとバラで飾られた帽子を身につけ
気取った仲間たちに囲まれて、フランス語を話していたね
一昨日、君と会ったんだ
一昨日のトレド通りで
T’aggio vuluto bene a te!
Tu mm’hê vuluto bene a me!
Mo nun ce amammo cchiù,
ma ê vvote tu,
distrattamente,
pienze a me!
君を心から愛していた
君も愛してくれていたよね
今はもう愛し合っていないけれど
君は僕を時々想ってくれるのだろうか
2
Reginè’, quanno stive cu mico,
nun magnave ca pane e cerase.
Nuje campávamo ‘e vase… e che vase!
Tu cantave e chiagnive pe’ me!
E ‘o cardillo cantava cu tico:
“Reginella ‘o vò’ bene a stu rre!”
レジネッラ(小さな王女様)、僕といた日々は
パンとサクランボだけを食べて
口づけをすれば満たされていた
君は僕のために歌い、泣いた
金鳥(ゴシキヒワ)も一緒に歌っていたよ
「小さな王女様は、この王様を愛している」と
T’aggio vuluto bene a te!
Tu mm’hê vuluto bene a me!
Mo nun ce amammo cchiù,
ma ê vvote tu,
distrattamente,
parle a me!
君を心から愛していた
君も愛してくれていたよね
今はもう愛し合っていないけれど
君は僕に時々話しかけているのだろうか
3
Oje cardillo, a chi aspiette stasera?
nun ‘o vvide? aggio aperta ‘a cajóla!
Reginella è vulata? e tu vola!
vola e canta…nun chiagnere ccá:
ああ、鳥よ、君は誰を待っているの?
見てごらん、カゴを開けたよ
レジネッラが飛んで行ってしまったのだから、君も自由に飛んでゆけ
T’hê ‘a truvá na padrona sincera
ch’è cchiù degna ‘e sentirte ‘e cantá.
Mo nun ce amammo cchiù,
ma ê vvote tu,
distrattamente,
chame a me!
羽ばたいて歌っておくれ、ここで泣かないで
誠実な主人を見つけておくれ
今はもう愛し合っていないけれど
君は僕を時々呼んでいるのだろうか