偉大な音楽家たちの人生も、映画で楽しむことでより一層深く理解することができます。
人物像や作曲の経緯、当時の時代背景や生活様式に触れ、あらためて曲を聴くとまた違った感情が芽生えてきます。
この記事では、クラシック音楽で有名な作曲家たちを題材として映画をご紹介します。
アマデウス(1984年)
クラシック音楽家の映画といえば、この『アマデウス』を真っ先に思い出す方も多いのではないでしょうか?
『アマデウス』は1984年度アカデミー賞8部門を獲得した映画です。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの天才的な姿、ちょっと下品で奇抜な姿格好など、モーツァルトの個性を存分に表現した作品です。
モーツァルトを演じたトム・ハルスはこの映画のためにピアノを猛特訓し、劇中ではほとんど代役や吹替なしでピアノを演奏しているそうです。
また、指揮法についてもかなりのトレーニングをしたと言われています。
物語は年老いたサリエリが、モーツァルトについて語る形式で進んでいきます。
病床に伏してもなお死の直前までレクイエムを口ずさむモーツァルトの姿には、やや恐怖を感じます。
ショパン 愛と哀しみの旋律(2002年)
ショパン生誕200年を記念して、ショパンの祖国ポーランドで制作された映画です。
若き日のフレデリック・ショパンと女流作家ジョルジュ・サンドの出会いから愛の逃避行を描いた作品です。
物静かで憂いのあるショパンと、堂々としながらも少女のような天真爛漫さを持つサンド。
二人が出会うシーンでは、黒髪に黒いドレスに身を包み、肖像画から抜け出したようなサンドの姿が忠実に再現されています。
二人の雰囲気や関係性を彷彿とされる美しいラブストーリーです。
敬愛なるベートーヴェン(2006年)
ベートーヴェンの不朽の名曲、交響曲第九番が誕生する過程を描いた作品です。
50代となり耳が聴こえなくなったベートヴェンのもとに若く美しい女性の写譜師アンナが現れます。
小娘だと思い始めは相手にしなかったベートーヴェンですが、アンナの音楽的な能力と献身的なひた向きさに徐々に心を開いていきます。
アンナもまたベートーヴェンの才能を間近で見ることで心を打たれながらも、彼の無頓着な言動に振り回されながら、手足耳となって支えていきます。
髪がぐちゃぐちゃのまま街を歩き回ったり、巨大な補聴器を耳に当てながら大声でしゃべりちらしたり、時にはユーモアも見せ、作曲となると一心不乱になる晩年のベートーヴェンの姿にはリアリティを感じます。
原題は「copying Beethoven」というタイトルで、copying=写す=写譜を指しています。
直訳すると「ベートーヴェンをコピーする(写譜する)」という意味になりますね。
日本語のタイトルは「敬愛なるベートーヴェン」となっていて、アンナのベートーヴェンに対する想いに焦点が当てられています。
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト(2013年)
伝説的な天才ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニの波瀾万丈の半生を描いた映画です。
パガニーニは類稀なる超絶技巧のヴァイオリン奏法により「悪魔に魂を売って演奏技術を手に入れたのでは」と噂されるるほどでした。
若き日のフランツ・リストはパガニーニの演奏に衝撃を受け「私はピアノのパガニーニになる」と決心したと言われています。その後、リストは「ラ・カンパネラ」「24のカプリース」などパガニーニの楽曲をピアノ曲として編曲しています。
パガニーニ役は、ヴァイオリニストのデイヴィット・ギャレットが演じており、もちろん吹替なしですべて本人が演奏しています。
超絶技巧の演奏技術はもちろん、パガニーニの病弱でどこか影のある雰囲気、女性やアヘンに溺れる姿など、人間らしさを感じるシーンも多くあります。
演奏途中でヴァイオリンの弦が切れても1本の弦で最後まで弾き切った、という逸話も劇中で再現されています。
悪魔に取り憑かれたようにストラディバリウスを熱演する姿は圧巻です。
クララ・シューマン 愛の協奏曲(2008年)
ロベルト・シューマンの妻であり、自身もピアニストや指揮者として活躍したクララ・シューマンが主役の映画です。
ロベルトの持病が悪化して自殺未遂の末に入院したあとも、クララは8人の子供を育てながら家計を支えました。そんな時に献身的に彼女を支えたのが、ロベルトの弟子だったヨハネス・ブラームスです。
若きヨハネスの演奏に心惹かれるクララと、歳上で美しく才能あふれるクララに憧れるヨハネスの関係。二人は惹かれ合いながらも生涯プラトニックな関係だったと言われていますが、映画ではその微妙な三角関係の様子がさわやかに描かれています。
演奏シーンも楽しめるので、シューマン&ブラームスが好きな方は楽しめる作品です。