オペラ

ハバネラ〜恋は野の鳥『カルメン』より 歌詞の意味・解説

ハバネラ Habanera」は、ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet, 1838-1875)作曲のオペラ『カルメン(Carmen)』の第一幕で歌われる曲です。冒頭の歌詞から「恋は野の鳥 L’amour est un oiseau rebelle」とも呼ばれています。

「ハバネラ Habanera」は、第一幕のカルメンが登場するときに歌われます。曲を聴けば「聴いたことがある!」と思う人も多いでしょう。第二幕でエスカミーリョが歌う「闘牛士の歌」と並んで有名な曲です。

そもそも「ハバネラ」とは、19世紀のキューバで起こった舞曲のこと。キューバの首都ハバナにちなんで名付けられました。ゆったりとした4分の2拍子のリズムであることが特徴です。

ハバネラの父と呼ばれるセバスティアン・イラディエル(Sebastián Iradier, 1809-1865)の歌曲「エル・アレグリート El arreglito」のメロディを、ビゼーがスペイン民謡だと勘違いして転用してしまったのが「恋は野の鳥」なのです。盗作ではないかと裁判沙汰にまでなりましたが、ビゼーに悪意がなかったことが認められ、楽譜には「模作である」と但し書きが掲載されて一件落着となっています。

ビゼー『カルメン』の概要とあらすじ

カルメン』は、フランスの作家プロスペル・メリメの小説をもとに、ビゼーが作曲した4幕のオペラです。歌の間をセリフでつないでいくオペラ・コミック様式で書かれています。

スペインが舞台ですが、フランス語で書かれており、フランスオペラの代表作と評価されています。

しかし、1875年3月3日にパリのオペラ・コミック座で初演されたときは、スキャンダラスな内容だったせいか不評に終わりました。初演から3カ月後、ビゼーは急死してしまいます。そこで、ビゼーの友人である作曲家のエルネスト・ギローが改作を担当し、ウィーン公演では大成功を収めました。

『カルメン』の物語は、1820年頃のスペインのセビリアが舞台。

タバコ工場で働くジプシーの女カルメンは、歌で男たちを魅了します。竜騎兵伍長のドン・ホセは、ミカエラという母親の決めたフィアンセがいるにもかかわらず、美しいカルメンに挑発されて、破滅への一途をたどります。捕らえられたカルメンを逃がした罪で、投獄されてしまったのです。

しかし、カルメンは、ホセの投獄中に出会った闘牛士のエスカミーリョに心変わりしてしまいました。嫉妬の炎を燃やすホセ。

危篤の母のために一度は故郷に戻ったホセでしたが、再びカルメンの前に現れ、復縁を迫ります。カルメンは「エスカミーリョを愛している」と言い放ち、ホセからもらった指輪を投げつけて拒絶します。すると、逆上したホセは、カルメンを刺し殺してしまうのでした。

「ハバネラ Habanera」原曲歌詞と日本語訳

L’amour est un oiseau rebelle

Que nul ne peut apprivoiser,

Et c’est bien en vain qu’on l’appelle,

S’il lui convient de refuser.

Rien n’y fait, menace ou prière,

L’un parle bien, l’autre se tait;

Et c’est l’autre que je préfère.

Il n’a rien dit, mais il me plaît

L’amour (× 4)

恋は野の鳥

誰にも手なずけられないの

呼んでもムダよ

どうせ断られるのだから

脅されてもお願いされてもどうにもならないわ

おしゃべりと無口なら

私は無口なほうが好き

何も言わなくても、それでいいの

それが恋!恋なの!

それが恋!恋なの!

*L’amour est enfant de bohème,

Il n’a jamais, jamais, connu de loi:

Si tu ne m’aimes pas, je t’aime;

Et si je t’aime, prends garde à toi!

Si tu ne m’aimes pas, si tu ne m’aimes pas, je t’aime!

Prends garde à toi!

Mais si je t’aime, si je t’aime, prends garde à toi!

*恋はジプシーの申し子

ルールなんて知らないの

たとえ想われていなくても、私はあなたに恋している

でも私に想われたのなら、どうか気をつけてね

たとえ好きになってもらえなくても、どんなに想われなくても、

私はあなたに恋している

だから気をつけてね

私に想われたのなら、もし私が恋したら、どうか気をつけてね

*くりかえし

L’oiseau que tu croyais surprendre

Battit de l’aile et s’envola;

L’amour est loin, tu peux l’attendre;

Tu ne l’attends plus, il est là!

Tout autour de toi, vite, vite,

Il vient, s’en va, puis il revient,

Tu crois le tenir, il t’évite,

Tu crois l’éviter, il te tient!

L’amour (× 4)

捕まえたと思っても

鳥は翼をはばたかせて、飛び去ってしまう

恋が遠くにあると、あなたは待っているのかもしれないけれど

もう待たなくていいのよ、恋はここにあるのだから!

あなたのまわりを、くるくると素早く

来たかと思えば行ってしまい、そしてまた戻ってくる

捕まえたはずなのに、逃げていき

逃げたと思えば、あなたを捕まえている

それが恋!恋なの!

それが恋!恋なの!

*くりかえし