オペラ

暗い森『ウィリアム・テル』より 歌詞の意味・解説

引用:Wikimedia Commons「Category:William Tell (opera)」

「暗い森 Sombre forêt」は、ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini, 1792-1868)作曲の全4幕のグランド・オペラ『ウィリアム・テル Guillaume Tell』の第2幕で、皇女マティルドがアルノールへの想いを歌うアリアです。台本がフランス語のため、本来は『ギヨーム・テル』が正しい読み方ですが、日本では『ウィリアム・テル』という題名で親しまれています。

『ウィリアム・テル』の序曲にある「スイス軍の行進」は、映画やドラマ、CMなどでよく使われている有名な曲です。

ロッシーニは『ウィリアム・テル』を完成させたあと、オペラ界を引退しました。

ロッシーニ『ウィリアム・テル』の概要とあらすじ

『ウィリアム・テル』は、1829年8月3日にパリの王立音楽アカデミー劇場(現在のオペラ座の前身となる劇場)で初演されました。その後も人気を集め、1868年2月にはパリ・オペラ座で、ロッシーニ本人を迎えた500回記念公演が行われています。

台本は、スイスの伝承をもとにシラーが書いた戯曲『ウィリアム・テル』を原作としています。

引用:Wikimedia Commons「Category:William Tell (opera)」

物語の舞台は、オーストリアの支配下に置かれた14世紀初頭のスイス。
弓の名手ウィリアム・テルは、圧政に苦しむ民衆とともに祖国の解放を願っていました。

若者アルノールは、オーストリアの皇女マティルドと愛し合っていましたが、祖国への思いと恋心との間で気持ちが揺れ動いていました。夕暮れの森でマティルドは、アルノールへの募る想いを込めて「暗い森」を歌います。そこへアルノールが現れ、2人は互いの愛を確かめ合うのでした。

そんななかで、父メルクタールがオーストリア人総督ジェスレルによって殺されたことを知ったアルノール。彼は父の敵を討ち、スイスの独立のために戦うことを決意します。テルの呼びかけに応じて各地の愛国者たちも集まり、オーストリアへの抵抗を誓うのでした。

ジェスレルはスイス人を服従させるため、広場に掲げた帽子に敬礼するよう命じます。そこに息子のジェミとともに通りかかったテルは敬礼を拒否し、捕らえられてしまいました。弓の名手であるテルに対し、ジェスレルはジェミの頭に載せたリンゴを射抜くよう命じます。テルは見事にリンゴを射抜きますが、もう一本の矢を隠し持っていたことを問い詰められ、「失敗していたら、その矢でジェスレルを射るつもりだった」と答えたため、再び捕らえられてしまいました。

テルは嵐の湖を渡る船で護送されますが、巧みな操船によって岸へ逃れます。そして追ってきたジェスレルの心臓を矢で射抜きました。これを合図にスイス各地で反乱が起こり、アルノールたちも戦いに立ち上がります。

やがてオーストリア軍は敗れ、スイスは自由を取り戻しました。アルノールとマティルドも再び愛を確かめ合います。嵐が去り、美しい山々と湖が姿を現すなか、民衆は祖国に自由が戻ったことを神に感謝し、物語は幕を閉じます。

「暗い森」原曲歌詞と日本語訳

Sombre forêt, désert triste et sauvage,
Je vous préfère aux splendeurs des palais:
C’est sur les monts, au séjour de l’orage,
Que mon cœur peut renaître à la paix;

暗い森よ もの悲しく荒れ果てた野よ
私は宮殿の華やかさよりも、あなたたちのほうが好き
嵐の吹き荒れる山の中でこそ
私の心はようやく安らぎを取り戻せるの

Mais l’écho seulement apprendra mes secrets.
Toi, du berger astre doux et timide,
Qui, sur mes pas, viens semant tes reflets,

けれども、私の秘密を知っているのはこだまだけなの
羊飼いを照らす優しくて控えめな星よ
私の歩みに静かに光を降り注いでいる

Ah! sois aussi mon étoile et mon guide!
Comme lui tes rayons sont discrets,
Et l’écho seulement redira mes secrets.

ああ、私の星となり、どうか私を導いて!
あなたの光は、あの人と同じように穏やかで優しいの
そして、こだまだけが私の秘密を語り継ぐでしょう