画像出典:WIKI MEDIA COMMONS
「あなたの声に心は開く Mon cœur s’ouvre à ta voix」は、カミーユ・サン=サーンス(Camille Saint-Saëns, 1835-1921)作曲の全3幕のオペラ『サムソンとデリラ Samson et Dalila』の第2幕でデリラが歌うメゾソプラノのアリアです。
デリラは愛を告白するかのように歌っていますが、その真の目的はサムソンから怪力の秘密を聞き出すことにあります。そのため、このアリアは美しい恋の歌であると同時に、巧妙な誘惑の歌でもあります。
「あなたの声に心は開く」は、コンサートやオペラの舞台で取り上げられることが多く、メゾソプラノを代表するアリアのひとつとして長く愛されています。
サン=サーンス『サムソンとデリラ』の概要とあらすじ

サムソンとデリラ(1615年) 画像出典:Wikipedia
サン=サーンスが『サムソンとデリラ』の作曲を開始したのは1868年です。当初はオラトリオとして構想されていましたが、後にオペラとして完成します。
この作品は、旧約聖書『士師記』の「サムソンとデリラ」の物語をもとにつくられています。しかし、聖書を題材にした作品だったことから当時のフランスでは受け入れられず、初演までには長い年月がかかりました。
全曲の初演は1877年です。フランツ・リストの後押しによってドイツ・ヴァイマルでドイツ語で上演され、その後フランスでも成功を収めました。現在ではサン=サーンスの代表作として親しまれています。

※生成AIによるイメージ画像
物語の舞台は、紀元前1150年頃(諸説あり)のパレスチナのガザ。
ヘブライ人たちは、海の民ペリシテ人の支配下で苦しい生活を送っていました。神から怪力を授かったヘブライ人の英雄サムソンは、民衆を率いて立ち上がり、ヘブライ人を解放します。
そのサムソンの前に現れたのが、美しいペリシテ人の女性デリラでした。デリラは妖艶な魅力でサムソンを惹きつけ、サムソンは次第にその魅力に心を奪われていきます。
デリラの家にペリシテ人の大司祭が訪れます。彼は敵であるサムソンを捕らえれば、望むだけの富を与えると持ちかけました。するとデリラは、自らの魅力でサムソンを屈服させてみせると言い放ちました。
そうして、デリラのもとを訪ねてきたサムソンに、「あなたの声に心は開く」を歌い、愛を語りながら、サムソンの怪力の秘密を打ち明けるよう迫ります。サムソンは秘密を明かすまいとしていましたが、デリラの誘惑に負け、とうとう「髪を切られると力を失う」という秘密を明かしてしまうのでした。
サムソンが眠った後、デリラは彼の髪を切り、待ち構えていたペリシテ人たちを呼び込みます。力を失ったサムソンは捕らえられ、視力を奪われて監獄へ送られてしまいました。
ペリシテ人たちが勝利を祝う神殿に引き出されたサムソンは、神に祈りを捧げます。すると怪力が再びよみがえり、神殿の柱を倒して建物を崩壊させました。サムソンは自らの命と引き換えにペリシテ人たちを滅ぼしたのでした。
「あなたの声に心は開く」原曲歌詞と日本語訳
Mon cœur s’ouvre à ta voix,
Comme s’ouvrent les fleurs
Aux baisers de l’aurore!
あなたの声に私の心は開く
まるで夜明けの口づけを受けて
花々が咲くように
Mais, ô mon bien-aimé,
Pour mieux sécher mes pleurs,
Que ta voix parle encore!
けれども、ああ愛する人よ
私の涙が乾くまで
もっとあなたの声を聞かせて
Dis-moi qu’à Dalila
Tu reviens pour jamais,
Redis à ma tendresse
Les serments d’autrefois,
Ces serments que j’aimais!
デリラのもとへ永遠に帰ってくると
私に言ってください
かつて交わした愛の誓いを
もう一度言ってください
私が愛したあの誓いの言葉を
Ah! réponds à ma tendresse!
Verse-moi, verse-moi l’ivresse!
ああ、この愛に応えて
私を愛の陶酔で満たして
Ainsi qu’on voit des blés
Les épis onduler
Sous la brise légère,
Ainsi frémit mon cœur,
Prêt à se consoler,
À ta voix qui m’est chère!
軽やかな風に吹かれて
麦の穂が揺れるように
私の心もまた震える
愛しいあなたの声に
慰められながら
La flèche est moins rapide
À porter le trépas,
Que ne l’est ton amante
À voler dans tes bras!
死をもたらす矢よりも速く
あなたを愛する私は
あなたの腕の中に飛び込むでしょう
Ah ! réponds à ma tendresse!
Verse-moi, verse-moi l’ivresse!
ああ、この愛に応えて
私を愛の陶酔で満たして