オペラ

ある晴れた日に 『蝶々婦人』より 歌詞の意味・解説

「ある晴れた日に Un bel di, vedremo」は、ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini, 1858-1924)作曲のオペラ『蝶々夫人(Madama Butterfly)』の第二幕で蝶々さんによって歌われるアリアです。夫に見捨てられたとも知らずに、蝶々さんが夫の帰りを信じて待っている自らの心情を歌い上げます。

全編を通して流れる美しい音楽と蝶々さんの悲哀が胸を打つ作品です。舞台が日本ということもあり、曲のところどころに日本の旋律が組み込まれています。

「ある晴れた日に」は、オペラのなかでもっとも人気のあるアリアといっても過言ではありません。著名なソプラノ歌手マリア・カラスは「ある晴れた日に」を得意としていました。

この曲はCMで起用されたり、フィギュアスケートの浅田真央さんがフリー演技で使用したりしたことでも有名です。

プッチーニ『蝶々夫人』の概要とあらすじ

オペラ『蝶々夫人』は、アメリカの弁護士で小説家のジョン・ルーサー・ロングが書いた短編小説『マダム・バタフライ(Madame Butterfly)』が原作です。この原作をもとに制作された、アメリカの劇作家デーヴィッド・ベラスコの同名の戯曲をもとにつくられました。

1904年2月17日に、イタリア・ミラノのスカラ座で初演されました。しかし、イタリア人にとっては未知の国だった日本の物語であること、第二幕が長すぎたことなどが原因で、初演は失敗に終わります。

初演を指揮したトスカニーニの助言により二幕構成を三幕構成に改訂し、3カ月後におこなわれたブレーシアでの再演では大成功を収めました。

物語の舞台は、1890年代の日本・長崎。

アメリカ海軍士官であるピンカートンは、結婚斡旋屋のゴローの紹介によって、15歳の芸者である蝶々さんを現地妻として迎えます。アメリカ総領事のシャープレスは、この結婚を軽率だと警告しますが、ピンカートンは気にも留めません。

蝶々さんはメイドのスズキを伴い、嫁いできました。彼に尽くす覚悟でキリスト教に改宗までしてしまいます。

それから3年が経過。ピンカートンはすでにアメリカに帰っていました。蝶々さんは、ピンカートンが戻ってくることを信じて「ある晴れた日に」を歌い上げます。

蝶々さんには、ピンカートンが去った後に産んだ子どもがいました。ピンカートンからの手紙の内容を伝えるためにシャープレスが訪れます。もう自分のもとに戻ってこないと察した蝶々さんは「死ぬしかない」と泣き叫びます。シャープレスは、ピンカートンがアメリカで結婚して妻がいることを話せませんでした。

長崎の港でピンカートンの軍艦を見た蝶々さんは、喜んで彼の帰りを待ちます。しかし一晩経っても彼が帰ってくることはありません。

蝶々さんと子どもが眠っている間に、ピンカートンとシャープレスが訪れます。新しい妻ケイトも一緒でした。

シャープレスはスズキに、子どもをケイトに預けるように頼みます。ピンカートンはようやく自分の罪の大きさに気づき、その場を立ち去ってしまいました。

そこに現れた蝶々さんは、すべてを察して、子どもを預けることを決意します。

子どもに目隠しをして、蝶々さんは自害します。ピンカートンとシャープレスが駆けつけたときには、すでに息絶えていたのでした。

ここで幕が閉じます。

「ある晴れた日に Un bel di, vedremo」原曲歌詞と日本語訳

Un bel di, vedremo

levarsi un fil di fumo

sull’estremo confin del mare

E poi la neve appare.

ある晴れた日に

遠い海のかなたに

ひとすじの煙が立ち上り

やがて船が見えてくる

Poi la neve bianca

entra ne porto,

romba il suo saluto.

真っ白な船が

港に入り

礼砲を轟かせる

Vedi? È venuto!

Io non gli scendo incontro.Io no.

Mi metto là sul ciglio del colle

e aspetto, e aspetto gran tempo

e non mi pesa,la lunga attesa.

見て!あの人よ!

でも迎えには行かないわ 行かないの

近くの岬に出て

あの人を待つわ いつまでも

どんなに長くてもつらくないわ

E uscito dalla folla cittadina

un uomo, un picciol punto

s’avvia per la collina…

港の町を離れて

一人の男が

丘を登ってくる姿が見える

Chi sarà? chi sarà?

E come sarà giunto che dirà? che dirà?

Chiamerà “Butterfly” dalla lontana.

あれは誰?誰なの?

ここに登ってきたらなんて言うのかしら?

遠くから「蝶々さん」と呼ぶのよ

Io senza dar risposta 

me ne starò nascosta

un po’ per celia. 

e un po’per non morire..

al primo incontro,

ed egli alquanto in pena

chiamerà,chiamerà:

返事はしないわ

隠れるのよ

それはいたずらでもあるし

嬉しさのあまり死んでしまわないようにするため

するとあの人は心配して

こう呼ぶの こう呼ぶのよ

“Piccina mogliettina olezzo di verbena,”

I nomi che mi dava al suo venire

「かわいい妻よ バーベナの香りよ」

以前あの人がつけてくれた名前なの

Tutto questa avverrà, te lo prometto.

Tienti la tua paura,

io con sicura fede l’aspetto.

きっとそうなるわよ 約束するわ

心配してもムダよ

あの人は帰ってくるんだから 信じて待つわ